NHK杯本戦初出場! 井出隼平四段の自戦記

左/井出隼平四段、右/近藤誠也五段 撮影:河井邦彦
第68回 NHK杯戦1回戦 第9局は、本戦初出場となる井出隼平(いで・じゅんぺい)四段と、本戦シードの近藤誠也(こんどう・せいや)五段の対局だった。放送時の解説は井手四段の師匠、田丸昇(たまる・のぼる)九段。井手四段が寄せてくれた自戦記から、序盤の展開を紹介する。


* * *


■初めての本戦

デビューして2年がたつ。実はこれが初めて本戦に入った棋戦である。テレビ対局ということもあり緊張していた。
解説をするのが師匠ということもあり、朝は待ち合わせをしていただいた。
初のNHK杯本戦を前に道に迷うなどの憂いもなく万全の構えである。
振り駒も先手が出て予定どおりの振り飛車に。
どうなるかは分からない。力は出し切れそうだと思ったが、まだ経験の少ない戦法なので不安も大きかった。


■経験済みの展開

1図から2図のあたりは、後手にはさまざまな手段がある。△7七角成から△3三角と設置したのち、先手の桂頭を狙う指し方。△4四歩(2図)と角道を止めずに囲いを進める順もある。力戦形なので指してみなければ分からないことが多い。
私は今まで角道を止めて指すノーマル四間飛車を多用していた。しかし最近このような力戦振り飛車に誘導することが多くなり、必然的にそのような展開になりやすかったのだ。もっと自由に将棋を指してみたいという、心境の変化である。
本譜は穏やかな囲い合いの展開になった。こちらの主張は1筋の位を取っていることだ。これをとがめるために早めに動かれる順も心配していたが、
本局は後手番らしくじっくりとした流れとなった。実はこの展開は研究会で指したことがあり、なかなかの好感触を持っていた。途中まで全く同じ進行だったが、△3二銀(3図) は初めて見る局面。ここから未知の世界である。

最近はこういう将棋のほうが楽しい。解放感があるのだろう。
3図から▲8六歩と積極的に動いていったのは、自陣が早くも最善形になっているからだ。先手番らしく積極的に行きたいという思いもあった。
▲8六同飛に△同飛と交換するのは、後手陣が片寄っているのに対し、先手陣はバランスよく隙がないため有利になる。

※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2018年8月号より

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