涼しさだけが浮き彫りに——「夏料理」を詠む

暑い時期の食卓には、冷たいものや、見た目にも涼しい色合いの料理がよく並びます。そんな夏ならではの料理を表す季題が「夏料理」です。星野立子(ほしの・たつこ)が詠んだ夏料理の句を、立子の孫で「玉藻」主宰の星野高士(ほしの・たかし)さんが紹介します。

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春の雨、夏の雨、秋の雨、冬の雨といったように、「夏○○」という季題があれば、他の季節名を冠した同様の季題があります。雨の場合は寒の雨、梅雨、といった四季以外の季題もあります。ところが、夏料理は夏料理だけで、冬料理という季題はありません(もちろん、寒料理、梅雨料理という季題もありません)。冬料理という季題なら、あっても面白いとは思いますが、俳人は代りに「寄鍋」「風呂吹(ふろふき)」のように、具体的な冬の料理名を使って詠(よ)みます。そんな冬料理の詠み方に比べると、今月の兼題の句は漠然とした詠みぶりです。
美しき緑走れり夏料理

星野立子


作者は何を食べているのでしょうか。「緑走れり」は細長い葉っぱのことだと思いますが、刺身に敷いてあるのでしょうか、冷麦や筍飯(たけのこめし)の上に乗せてあるのでしょうか。判然としません。
しかし、その判然としないところがこの句の魅力なのです。刺身、冷麦、といった具体的な料理名が無いために、葉っぱ以外のものが目に入りません。さらに言えば、葉っぱとも言わず、「緑」としか言っていません。涼しげな色合いだけが、目に入ってきます。余計なことを述べない、俳句の特長を存分に活かした一句です。
■『NHK俳句』2018年6月号より

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