敵が取られたら困る石から攻める!

『NHK囲碁講座』の別冊付録「寺山怜の自由に打つためのポイント講座」では、寺山怜(てらやま・れい)五段の楽しいコラムと三択形式の問題&解答をお届けしています。2月号は「カラミ攻めは重い石から」と題し、弱い石を見極めるポイントを指南します。

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先日、初めてNHK杯テレビ囲碁トーナメントの解説(2017年12月3日放映)を務めました 。困ったことに細かい碁になり(笑)、汗が吹き出しました。おまけに「際どくはないだろう、2目半くらいの差かな」と予想していたら、なんと半目勝負。緊張していたのかもしれません。
でも、勝ち負けまでは間違えません。これは自信があります。対局者の様子でだいたいどちらの勝ちかは分かるものです。ぼくの目にもくらーく見えるんですよ、負けそうな棋士の顔は(笑)。
一力遼八段に関してはとてもよく分かります。彼は形勢判断が正確ですから、自信たっぷりな表情ならまず負けません。対局しているときなども参考にできそうですね。彼が堂々とした様子なら、「あ、ぼくが今、形勢不利なのか」と。これは皆さんと碁敵の関係に似ているかな。優勢のときに出るクセ、知っているでしょ? お茶をゆっくりすすったり、急にそわそわしだしたり(笑)。このあたりも碁の面白いところでしょうか。
解説がうまいなあと特に思うのは、小林覚先生(九段)ですね。人間的にカッコイイから、それが解説にもにじみ出ているのかなあ。言葉に深みもあるし。これはレジェンドと呼ばれている先生方に共通していることですね。ぼくもいつかは深みのある解説をしてみたいです。
今月は二つ弱い石があるときの攻め方、そしてカラミ攻めについて考えていただきます。標的が二つなら、どっちから攻めるべきか。理由はちゃんとあるんですよ。「敵が取られたら困る石から攻める」と覚えておきましょう!

■第1題 黒番(1〜22)


白22と打ち込まれた場面です。ドキッとしますよね(笑)。こんなときは一呼吸置くのがお勧め。カッとなっても怖がってもいけません。

■Aの場合

構想はOK 逃げてくれれば大成功
1図 黒1と隅を守りながら白を追い出そうと考えた方、少なくないと思います。確かに、白2と逃げてくれれば、黒3、5の調子がぴったり。右辺白とのカラミ攻めが実現します。極めて自然に映る白2のトビが実は疑問手。こうはならないんですよ。

つまらない 取らされた?
2図 黒1には白2と右辺を補強されて、黒はいまひとつです。右辺白と上辺白、取られると大きいのはどちらか。こう考えれば当然の選択です。黒3で は動きづらいのですが、まだ活用法が残っていました。これまでも言ってきましたよね。石を捨てることも作戦の一つです。

 
参考〈1〉  変わり身を許す
3図 白1の打ち込みが成立します。 を動くのはしんどそう。そこで、このように を捨てることを視野に入れた方針を取られると、黒は持て余します。 は変わり身の余地がありますが、の一団はどうか。さすがに無理ですよね。2図白2の正当性がはっきりしました。

参考〈2〉  痛み分けではありません
4図 1図黒3のノゾキについて触れておきます。ぜひ決めておきたい交換で、逃すと白に楽をさせます。本図の黒1、3では白4と、のびのびとした姿での中央進出を許します。もう黒5は利きません。白6、8で が弱体化。白は をうまく捨てた理屈になっています。

※果たして真の正解は……? B、Cの解説はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2018年2月号より

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