コロナ禍でも成長し続ける東京。大きなパワーを持つ理由と今後の姿を考察

2030年「東京」未来予想図
『2030年「東京」未来予想図』
市川宏雄,宮沢文彦
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
1,738円(税込)
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 2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の大流行により、私たちの生活は大きく変わりました。緊急事態宣言に商業施設への営業自粛要請、イベントや競技の中止、教育機関でのオンライン授業導入......。経済活動は順次再開されているものの、まだまだコロナ前の生活は取り戻せていない状況です。

 そんななか各企業でテレワークが推進され、マスメディアが盛んに報道したのが「これを機に人々が東京から地方に移住し、東京一極集中が緩和されるのではないか」ということでした。しかし、結果としてはそのようなことは起きず、東京では変わらず多くの人が生活し、土地の価格は上がり続けています。

 こうした状況を見て、「『東京という都市が持つパワー、歴史、潜在能力』を丁寧に分析・検証していけば、これから先の未来、コロナ後の先が見通せない時代であっても、『東京の未来予想図』を描くことは可能ではないか」(同書より)と考えたのが、『2030年「東京」未来予想図』の著者である市川宏雄さん。同書は市川さんと宮沢文彦さんの共著です。東京が世界都市として繁栄する理由を各種データから分析・検証するとともに、5年後、10年後に待ち受けている東京の姿や、トップ都市として生き抜くためのヒントなどが記されています。

 まず、都市政策の視点で見てみると、ロンドンやニューヨークなど他の主要都市と比べても、東京ほど大規模な再開発プロジェクトが複数・同時進行されているところはないといいます。なかでも今後の開発で注目しているのが、虎ノ門・麻布台エリア、日比谷エリア、新宿エリアの3つだそうです。

 「ヒルズの未来形」として森ビルが手がける「虎ノ門・麻布台プロジェクト」、三井不動産による日比谷の再開発事業、東京都・新宿区主導のもと小田急電鉄・東京メトロ・JR東日本らが進める「新宿グランドターミナル構想」。東京には成長することをやめないパワーがまだまだあることがわかります。

 いっぽうで、よく議論されるのが東京一極集中の是非についてです。

「きわめて低い経済成長率しか達成できていない日本が今日でも先進国の一員でいられるのは、実は"東京一極集中のおかげ"」
「人口が集積すればするほどスケールメリットが働き、指数関数的に経済がより巨大に発展していく」(同書より)

 現在は東京都の法人事業税、法人住民税の税収のうち9000億円超が地方に再分配されていることから、「東京が潤えば、地方が栄える」との見方を示します。

 このほか、世界の都市総合力ランキングではどのような立ち位置か、香港に代わってアジアの国際金融センターになれるか、地震や豪雨、感染症などのリスクヘッジをどうするかなど、東京の現在の姿と、そこから予想できる近い将来の姿について書かれています。東京で働くビジネスマンや経営者、東京に資産を持つ人々などにとって、要注目の一冊と言えるでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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