57 歳男性のリアルな"熟年婚活ルポ"。アプリ、相談所、パーティー......中高年の婚活市場の実態は?

57歳で婚活したらすごかった (新潮新書)
『57歳で婚活したらすごかった (新潮新書)』
石神 賢介
新潮社
836円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> HMV&BOOKS

 日本の平均寿命は、女性が87.74歳、男性が81.64歳(2020年時点)。今後さらなる高齢化社会となるなかで、中高年や高齢者の婚活は活発化していくかもしれません。

 そんな思いを抱かせるのが、今回ご紹介する『57歳で婚活したらすごかった』です。著者の石神賢介さんは32歳で結婚、33歳で離婚。それからずっとシングルのまま東京でフリーランスの雑誌記者として働いている男性です。日々、仕事やプライベートで忙しくしているものの、いつも心のどこかに物寂しさを感じており、60代を前にして「もう一度結婚したい」と強く願うようになります。本書はそんな石神さんが、アプリや相談所、パーティーなどを利用して婚活した体験をリアルに綴った「57歳からの、オヤジの"熟年婚活記"」(本書より)です。

 まずは、ある有料婚活アプリに登録した石神さん。「自分が50代なので、アプローチする年齢はひと世代若い40代」(本書より)を設定します。同時進行で、総登録会員数5万人を謳う大手結婚相談所にも登録。入会金や年会費など高いコストがかかるぶん、結婚相談所の登録者は婚活アプリに比べて本気度も高いのが特徴だそうです。

 こうして怒涛の婚活ライフに突入しますが、実際にはなかなか手ごたえは得られず。「僕が魅力を感じる女性は、当然ほかの多くの男性会員からも申し込まれている。ライバルが多い」「たくさんの男性会員のなかから自分を選んでもらうには大変な努力が必要」(本書より)と石神さんは痛感します。

「57歳、バツイチ、収入は不安定なフリーランス、容姿は並以下。食事をお付き合いいただく、という意識で臨まないと、2度目、3度目と継続して会ってはもらえない」(本書より)

 いっぽうで、石神さんにフィットしたのが婚活パーティーです。あるパーティーでは、10人の女性参加者のうち3人から交際のリクエストをもらえたのだとか。当初、婚活アプリでは5人にアプローチしてマッチングは1人、結婚相談所では20人にお見合いを申し込んで会えたのは1人だったことを考えると、かなりの成功率と言えます。

 プロフィールの条件によって結婚市場価値が決まる婚活アプリや結婚相談所では、石神さんのようなタイプはどうしても不利になります。その点、ライブ感のある婚活パーティーの場は、初対面の相手と会話をすることに仕事柄慣れており、実年齢よりもいきいきとして見える石神さんにとっては、うってつけだったようです。自分がどういうタイプで、どのような婚活ツールに合っているのかを見極めることも大事だということでしょう。

 しかし、こうした婚活が実を結ぶことはなく、石神さんは58歳になり、「本当に結婚は幸せで、義務なのか。60歳を目の前にして、シングルをこじらせて、さんざん婚活をして、ようやく疑問を抱いた」(本書より)といいます。

 でも実は、成婚にいたっていないものの、コンスタントに複数の女性たちとデートをし、ときにはお泊まりもしている石神さん。「クソ老人」と罵られたり、本気で失恋したりもしましたが、さまざまな女性たちと出会うなかで、いつのまにか結婚を目的に婚活を行うのではなく、婚活そのものを楽しむようになっていたと明かします。

 そんな石神さんが最終的にどうなったのか、気になる方は本書で確かめてみてください。

 巻末には「超実用的『婚活次の一歩』攻略マニュアル」の付録付き。石神さんが体得した"成果を上げるヒント"があますところなく紹介されており、婚活中の男性にとっては実用書としても参考になるかもしれません。

[文・鷺ノ宮やよい]

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム