オックスフォード大・英国人女性、卒論は「日本のBL同人誌」 驚きの『海外オタ女子事情』

海外オタ女子事情
『海外オタ女子事情』
劇団雌猫
KADOKAWA
1,430円(税込)
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 いまや、日本のアニメやマンガなどのオタク文化は「クールジャパン」として、世界中の人々を魅了しています。では、実際にそれらを愛する人たちはどんなきっかけでハマり、どのように満喫しているのか、実は意外に知られていません。

 そんな海外オタクのリアルが詰まっているのが劇団雌猫著『海外オタ女子事情』。アジアやアメリカ・中東、ヨーロッパなど世界各国で、どんなコンテンツが人気なのかなど、世界の趣向や動向がわかりやすくまとめられています。

 例えば、本書では日本、英語圏、中国語圏と文化圏ごとに好みのアニメ傾向を分析。2018年秋クールの放送後人気ランキングでは、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』が日本1位、英語圏3位、中国語圏1位で、すべてのエリアで人気でした。英語圏では、『ゴブリンスレイヤー』『転生したらスライムだった件』『ゾンビランドサガ』が上位となり、「ゾンビ、ゴブリン、モンスター、異世界系といったジャンルを英語圏のファンは好む」傾向にあるといいます。同様に2019年冬クールでも1位は異世界系の『盾の勇者の成り上がり』でした。

 一方、中国語圏では「ラブコメ好き」な傾向があるそうです。2018年秋では『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『うちのメイドがウザすぎる!』、2019年冬では『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』『五等分の花嫁』が上位に名を連ねます。

 そうした世界のオタク文化の動向に触れながらも、本書でとくに力を入れているのは、世界各国の女性オタクたちにインタビューをして書かれた「オタ女子事情」。例えば、「萌え絵」のかわいさに魅せられた30代イギリス人女性・フォックスさんです。

「目が大きくてかわいい女の子の、萌え系のイラストが載っていました。『こんなアート見たことない!』って驚きました。『このアートがどこから来たのか』を調べ始め、流れでアニメやゲームなどの日本文化に興味を持つようになりました」(本書より)

 フォックスさんが魅せられたのは、日本で「泣きゲーの元祖」と称されるゲーム『Kanon』でした。当時フォックスさんは13歳で、『Kanon』が大人向けのいわゆる「エロゲ」とは知らず、「いたって普通のかわいい女の子が出てくるゲーム」として認識していました。ヒロインがいつも食べている「たいやき」を見て、「どんな味なんだろう?」と憧れていたと言います。

 ゲームは男性向け作品、同人誌では女性向けのBL作品が好きだというフォックスさん。日本語をマスターすれば、「大好きなゲームやマンガもファンサブ(ファンによってつけられた字幕)を待たずに楽しめる」という熱い思いから、名門オックスフォード大学に入学して東洋学部日本学を専攻。在学中に日本への留学も果たし、卒論のテーマは「日本のBL同人誌」だというから驚きです。

 2020年で来日9年目になるフォックスさんは現在、絵と音とともにテキストを読む「ノベルゲーム」の翻訳会社を日本で経営しています。最近は日本企業より海外企業からの仕事が多いため、「これを日本で出すのはいかがでしょうか?」と営業をかけることもあるといいます。将来的にはゲーム作品のプロデュースも視野に入れており、英語圏のインディーズゲーム開発者の間で、オリジナルのノベルゲームが盛り上がりを見せているそうです。

 日本人以上にオタク文化の沼にハマり、ただひたすらに「好き」にひたむきな姿勢の「海外オタ女子」たち。あなたも知られざる海外オタク事情をのぞいてみませんか?

(文・山中一生)

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