夫婦はお互いのことを理解していない方がうまくいく?

読書で離婚を考えた。
『読書で離婚を考えた。』
円城 塔,田辺 青蛙
幻冬舎
1,620円(税込)
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 夫婦がずっと仲良くいられる秘訣ってなんだろう。と考えた時「お互いを理解することでしょ」と言われたら「それはしごくまっとうな意見だわ」と思いますよね。でも果たして本当にそうでしょうか。夫婦はお互いのことを理解していた方がうまくいく?

 本書『読書で離婚を考えた。』では、ある作家夫婦がお互いの課題本を交互に指定し、それについての感想文を提出することで"夫婦の相互理解"を深めるべく格闘した記録です。

 夫、円城塔は芥川賞作家で、料理や数学、工作などが得意。
 妻、田辺青蛙はオークランド工科大学卒業の怪談好きホラー小説家。

 こんな二人が指定しあう本はジャンルもボリュームも自由奔放、病気で寝込んでいる夫に「読みやすい漫画がいいだろう」という配慮(?)により『黄昏流星群』(27巻)を指定する妻。ある時、数理を理解してもらおうと夫が妻に指定した本は『立体折り紙アート』、しかし鶴も折れない妻は折り紙にチャレンジさえしないという有様。感想はというと、「理解はできないけど、見ていて楽しい本でした」(本書より)。

 何冊本を勧め合っても全く歩み寄りをみせず、険悪なムードになっていく2人 。夫のことをどうしても理解できない妻・田辺さんからは、本書の中でこんな言葉が出てくるようになります。「夫のことで一番よく分からない点は、何で私と付き合ったり結婚しようと思ったのかということです」「私がもし、円城塔だったら自分と絶対付き合ったりしませんし」(本書より)

 それに対し夫の円城さんは最後にこう語る。

 「結局妻は最後まで、わからないを繰り返していましたが、やっぱり自分は、わからなさが好きなのだなと思うようになりました。こんなにバランバランな感じの夫婦なのに一緒にいるのは、(少なくとも一方は)そのバランバラン加減が好きだからということなのではないでしょうか」

 そもそも夫婦というものはお互いの欠けている部分を補い合う為に一緒に居るといっても過言ではありません。もともとは違う価値観を持った他人同士、すんなり理解し合えるというのも案外つまらないものなのかもしれません。

 さて、本書では2人の"感想文"が楽しめますが、総勢40冊の本が紹介されているので夫婦の格闘をのぞき見ながら読みたい本も見つかる、画期的な一冊です。

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