"こだわり"が売り上げを遠ざける?

こだわりバカ (角川新書)
『こだわりバカ (角川新書)』
川上 徹也
KADOKAWA/角川書店
864円(税込)
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"世界を知る。世界で学ぶ。世界とつながる。"
"世界をみつける。未来をみつける。"
"夢へのチャレンジが、未来を創る"
"多彩な学びとその先の未来へ"

 これらは、すべて大学(や学部)のキャッチコピー。これらのフレーズを読んでどこの大学かすぐに分かる人はなかなかいないのではないでしょうか。

 コピーライターの川上徹也さんは、自著『こだわりバカ』の中で、こう綴っています。

「大学のスローガンにおける"妖怪"(=手垢がついた決まり文句)は『世界』『未来』『学び』『時代』などの名詞と、『はばたく』『拓く』『見つける』『創る』『目指す』などの動詞の組み合わせです。『世界』、『未来』は特に頻出し、進む方向を示す『へ』、『に』、という助詞とセットになることも多いことが分かります」

 つまり、(極端に言えば)学生やキャンパスの写真とこれらの言葉を組み合わせれば大学のポスターは一丁あがり、ということ。例えば、"世界にはばたき、未来を拓く 〇〇大学"とすれば、どこかで見たことのあるようなポスターになるように。

 しかし、これではどんな特徴がある大学なのか、あまり印象に残りません。

 本書の中で、川上さんはこのように印象に残りにくい、あってもなくても同じで空気のようなキャッチコピーのことを「空気コピー」と呼びます。

 それでは、空気コピーにならないようには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。川上さんは以下のポイントを指摘します。

1、 その業界でよく使われる言葉を疑う
2、 常套句を避け、出来るだけ具体的に書く
3、 圧縮して言い切る


 例えば、ここ数年メディアで数多く取り上げられる品川女子学院が掲げる"28プロジェクト"という言葉があります。これは女性の人生のターニングポイントである28歳を見据え、将来のビジョンを持って行動できる女性を育てる。という意味を含んでいます。

 これが、もし"未来プロジェクト-未来に向けグローバルに活躍する女性を育てます"だったらどうでしょう? 当たり障りはないけれど、印象に残りづらいコピーとなってしまいます。ここで重要なのは、使い古された言葉を使わずに、28という具体的な数字を出し、圧縮された短い言葉で言い切る。これがポイントだといいます。

 そして本書のタイトルにもある"こだわり"について川上さんはこんなふうに述べています。

「今、日本の飲食・食品・製造業界をひとつの妖怪が徘徊しています。"こだわり"という名の妖怪が。この妖怪はかなり手ごわいです。どんどん増殖し、今や目にしない日はないくらいです。(中略)いつから日本人はこんなにも"こだわりバカ"になってしまったのでしょうか」

 本書の中で川上さんは、商品の具体的な魅力を表現せずに"こだわり"という言葉にみんなが飛びついたことで、他の店との違いがわからなくなってしまい効果をあげていない店がほとんどだといいます。せっかくいい商品を作っているのに選ばれない、売れない、儲からない......そんなもったいない状況に悩んでいる方は、本書を読んで「言葉で世界を変える」技法を学んでみませんか。

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