温泉水は"飲む野菜"! 国や地域によって異なる習慣とは?

なるほど世界地理
『なるほど世界地理』
宇田川 勝司
ベレ出版
1,620円(税込)
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 一日の仕事を終え帰宅したならば、熱いお風呂に入ってリラックスし、疲れを洗い流したい......。日本では当たり前となっている、湯船に浸かるという習慣ですが、世界の人々から見ると、夏でも熱い湯につかる日本人の入浴習慣には理解しがたいところがあるそう。

 たとえば欧米における入浴といえば、シャワー浴が基本なのは知られるところですが、世界を見渡してみると、アンデスの乾燥した高地やチベット、ネパールの高地に住む人たち、さらには西アジアやアフリカの乾燥地帯の遊牧民族は、そもそもお風呂に入らないのだといいます。こうした地域では、身体の垢はこするとポロポロと落ちるため、入浴はもちろん水浴も必要ないのだそうです。

 ちなみに、英語でお風呂はバス(bath)、温泉はスパ(spa)といいますが、これらの言葉はいずれもヨーロッパの地名が語源。バスという言葉の起源は、イギリスの首都ロンドンから180kmほど西にあるバース(bath)という小都市の名。このバースの歴史は古く、2000年以上も前に先住のケルト人が温泉を発見、その後ローマ帝国の支配下になると大浴場がつくられました。ローマ撤退後は一時廃れたものの、16世紀、エリザベス女王の時代には温泉地として復活、以来、貴族や上流階級の保養地として栄えたのだといいます。

 一方、温泉を意味するスパの由来は、ベルギー東南部の温泉地の名。14世紀頃からヨーロッパの王侯たちの保養に利用されていたスパには、300もの源泉があるそう。

 そしてこの温泉水は、"SPA"というブランド名で輸出され、現在では年間売上額が2億ユーロを超える、ヨーロッパを代表するミネラルウォーターに。

 日本では温泉といえば入ること、身体を浸すことがその大きな利用方法ですが、ヨーロッパにおける温泉の主要な利用方法は、健康法のひとつとして温泉水を飲むことにあるのだといいます。

 書籍『なるほど世界地理』にはヨーロッパの「飲料として」の温泉水について、こう綴られています。

「数億年前の地層から湧出するヨーロッパの温泉水は、地下の滞留期間が長いため、多くのミネラル分をバランスよく含んだ口当たりのよい硬水が多く、飲む野菜とも呼ばれてきた。現在でもEU諸国の1人あたりのミネラルウォーターの消費量は日本人の10倍〜20倍になるという」(本書より)

 日本人にも人気の"エビアン"もまた、フランスとスイス国境付近の温泉地の名です。それぞれの国や地域によって異なる入浴習慣や温泉の利用方法。本書『なるほど世界地理』では、こうした世界の国々のさまざまな習慣をわかりやすく解説。自らの価値観に揺さぶりをかけてくれる発見に多々出合える一冊となっています。

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