18きっぷで、旅の上級者の姿勢「身をゆだねる」「期待をしない」を学ぶ

「来ちゃった」
『「来ちゃった」』
酒井 順子
小学館
1,512円(税込)
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 この春も「青春18きっぷ」が発売され、学生をはじめ多くの鉄道好きが日本全国の旅を楽しむのではないでしょうか。鈍行での旅は時間がかかったり、体力を消耗したりと大変な部分もありますが、鈍行でしか得ることのできない貴重な体験や思い出があるので、いまでも同きっぷは根強い人気を誇っています。

 大人向け高級女性誌『プレシャス』で旅の連載をしている酒井順子さんも列車での旅が好きだといいます。同誌では編集者と『きょうの猫村さん』のほしよりこさんとの3人で、「出生率一位の地」や「寅さんが最後に行った地」といった、ラグジュアリーな読者たちは明らかに行かないであろうと思われるニッチな場所を訪問しています。この企画は、ヨーロッパ高級ブランドを身にまとったモデルさんが優雅に微笑む雑誌のなかで、明らかに異彩を放ったページだと言えるでしょう。

 ほしよりこさんは、連載をまとめた書籍『「来ちゃった」』のなかで、「公共の交通機関は、そこに行くまでなんにもできない。身をその場にゆだねる感じがある」と、列車の旅を表現しています。

 それに対し酒井さんも、「ゆだねるという感覚って、旅を味わい深くするのに大切なことなのかも。旅の最大の敵は期待だと思うから。期待せずにいる時に、目の前に突然何かが出てきたりするときの感動って、すごく大きいでしょう。ほら、宿でも、立派な宿には期待してしまうけど、民宿には大きな期待をしていないので、料理がおいしかったりすると、すごくうれしくなる」と、旅を楽しむポイントについて語っています。

 「身をゆだねる」「期待をしない」といった謙虚な姿勢は、旅の上級者しかもち得ないもの。どうしても安旅になる「青春18きっぷ」での旅で、こういった姿勢を学ぶいい機会になるのかもしれません。「青春18きっぷ」の販売は3月31日まで。4月10日まで利用が可能です。

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