電通とリクルート

電通とリクルート (新潮新書)
『電通とリクルート (新潮新書)』
山本 直人
新潮社
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 『ザ・テレビ欄』『ザ・テレビ欄Ⅱ』(TOブックス)という過去のテレビ欄をまとめた書籍があり、1975年~2005年までのテレビ欄の変化をみることができます。
 
 これを見ていると、あることに気がつきます。昔のテレビ欄は、現在と比べて横線の数が多い。つまり、ほとんどの番組が30~60分以内なので、一日のテレビ欄が細かく横線で分けられているのです。反対に土曜や日曜は、スポーツ中継や映画により、縦長の番組が増える傾向がありました。

 しかし、90年代以降こうした傾向に変化が起こります。とりわけ民放では、横線が減って、縦長のプログラムが増えました。2時間やそれ以上の番組が平日でも珍しくなくなってくるのです。平日午前のワイドショーが長くなり、昼前後のプログラムにも、1時間を超えるものが現れ始めます。これが90年代後半になると、夕方のニュースも2時間へと長時間化します。週末のプログラムにも長いものが目立つようになりました。

 こうした番組の多くは、いわゆる「情報番組」です。毎日のようにデパートの地下や商店街に行って「グルメ情報」を探したり、ショッピングモールで売れ筋の品を紹介したりしている番組です。その反対に、企画の作りこまれた番組はどんどん減少していっている印象があります。

 また、増える一方の「クイズ番組」にも変化が見られます。90年代半ばまでは、世界の各地に取材して視聴者の「知らないこと」を紹介する番組が人気でしたが、最近のクイズは「常識」を競うようなものが主流です。そして、その常識を知らない人間が笑われ、人気を博すといった流れが定番化しました。

 これらに共通して言えるのは、テレビが「未知の世界」を届ける媒体から、「日常」を届ける媒体に変化してきたということです。もちろん、それ自体は悪いことではないですが、テレビの低迷が叫ばれる昨今、「テレビから驚きが失われた」と感じている人は少なくないでしょう。

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