『プレデター:バッドランド』とっておきトリビア集!(ネタバレあり)
『プレデター:バッドランド』(公開中)より
異色のプレデター映画『プレデター:バッドランド』が公開されました。異色の、と書いたのは本作は今までのプレデター映画とかなり異なるアプローチだからです。
1作目の『プレデター』では凶悪ヴィランだったプレデターが本作ではヒーロー的です。筆者はSFパニック映画としての『ゴジラ(54)』 も好きですが、ゴジラをヒーロー的に描く『ゴジラ対~』路線のファンでもあるので、今回の『プレデター:バッドランド』も大いに楽しめました。
そしてここからは『プレデター:バッドランド』を観た方限定のトリビアです。
ネタバレ全開なのでいきます。
シュワちゃん映画からの引用
本作はいわゆるヒロイック・ファンタジー物をベースにしています。
剣を持った勇者がある目的を達成するため怪物たちのいる異世界をつきすすんでいくロードムービー的な物語といいますか。そして主人公が蛮族、タフガイであることが多い。
本作の監督ダン・トラクテンバーグは曰く、アーノルド・シュワルツェネッガーの出世作『コナン・ザ・グレート』からの影響を認めているようです。シュワルツェネッガーは『プレデター』の主役でもありました。シュワちゃんつながりでいうと『ターミネーター2』のサプライズも意識したらしい。『ターミネーター2』では1作目でヴィランだったターミネーターが、2作目ではヒーローとして活躍しますよね。今まで悪役として描かれていたプレデターを今回は観客に共感できるキャラとして登場させる。まさに『ターミネーター2』的な発想でしょう。トラクテンバーグ監督はシュワルツェネッガーと『プレデター』1作目で彼が演じた軍人ダッチが出る新しいプレデター映画の可能性について話をしているそうです!
『アバター』のナヴィ語を作った言語学者がプレデターのヤウジャ語を作った
トラクテンバーグ監督は、『エイリアン2』『ターミネーター2』、そしてもうすぐ『アバター』の最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の公開が控えるジェームズ・キャメロン監督にもアドバイスを求めたとか。キャメロン監督はこのプロジェクトのことを気に入り、完成した映画も絶賛しています。この映画の舞台である惑星ゲンナは怪獣惑星であり、そこに人類の代わりにアンドロイドたちが足を踏み入れるという設定は『アバター』っぽいですよね。このアンドロイドたちはまさに人類のアバターですから。なるほど!と思ったのは今回のプレデター、ヤウジャ族の言語は『アバター』シリーズでナヴィ語も開発した言語学者ポール・フロマー氏が手掛けています。こうしたこともあって映画のエンドクレジットにジェームズ(ジム)・キャメロン監督への謝辞があります。
『エイリアン』シリーズとのリンク
プレデター映画は『エイリアン』シリーズ同じ映画会社の20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)の作品です。同じ権利元なので、かつて『エイリアンVSプレデター』『エイリアンズVSプレデター』という2つの種族が戦うクロスオーバー映画が作られています(もっともこのアイデアは映画より先にエイリアンやプレデターがコミック化された際、すでに実現されていました)。こうした前例もあり『エイリアン』シリーズの、ある重要な設定が本作にも出てきます。それがウエイランド・ユタニ社。この会社は『エイリアン』シリーズに登場する企業で、生物兵器としてエイリアンの利用を考えています。
この夏配信されたドラマ『エイリアン:アース』にも登場。今回、本作で若きプレデターのデクとバディを組むティアはウエイランド・ユタニ社製のアンドロイドです。この映画ではウエイランド・ユタニ社はエイリアン以外にも宇宙の危険生物を手にいれようとしていたことが示唆されます。ウエイランド・ユタニ社は惑星ゲンナの魔獣カリスクを標本ナンバーXX0552として狙っています。ちなみに『エイリアン』から登場する、あのエイリアン(ゼノモーフとも呼ばれます)は標本ナンバーXX121です。テッサたちに指示するAIのMU/TH/UR(マザー)も『エイリアン』から登場。『エイリアン』の時はMU/TH/UR6000でしたが今回はMU/TH/UR062578 と表示されており、相当アップグレードしましたね。このMU/TH/UR がテッサに言うBuilding Better Worlds(よりよい世界を創ろう)はウエイランド・ユタニ社のスローガンです。今回の映画の中でティアがデクに対し「私たちはまだ亜光速の宇宙船技術を持っていない」と言います。だから宇宙探検には長い年月がかかるわけでそれゆえアンドロイドを派遣しているということがわかります。クライマックスでデクとパワーローダー(モビルスーツとフォークリフトを合わせたようなメカ)に乗ったテッサがバトルします。このパワーローダー戦は『エイリアン2』で主人公のリプリーがエイリアン・クィーンと戦った名シーンを想起させます。
さらに、あの宇宙SF映画超大作とプレデターが今後つながる!?
この映画にはお遊びなのか、それとも今後まさかのつながりが出てくるのか注目したいシーンがあります。それはデクの宇宙船の中に、今までプレデターたちがハントした獲物の頭蓋骨がコレクションされていますが、その真ん中に展示されているのが、これまた20世紀フォックスのSF宇宙映画の一つ『インディペンデンス・ディ』の侵略宇宙人の頭蓋骨っぽいのです。形がまさにそう。まさか将来的に『インディペンデンス・ディ』の世界ともクロスオーバーするのでしょうか? 20世紀フォックスとのつながりといえば、ここは『スター・ウォーズ』シリーズをリリースした映画会社です。監督は『プレデター:バッドランド』において・ティアを背負うデクは『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』で下半身が破壊されたC-3POをチューバッカが背負うシーンから、ティアの上半身と下半身が別々に動くのは『スター・ウォーズ クローンの攻撃』でC-3POの頭と体がバラバラになって戦闘に参加しているシーンから、それぞれ着想を得たようです。
そう、歴代20世紀フォックス宇宙映画からの引用が『プレデター:バッドランド』には多いことがわかりますね。
牙折れはコミックからの影響?
『プレデター:バッドランド』の主人公デクはかつて兄者を救うため牙の一つが折れたという設定です。1989年に発表されたコミック『エイリアンVSプレデター』に、人間の女性(日系人女性という設定)と心を通わせるプレデターが登場。牙が折れているので、彼女から「牙折れ」と呼ばれます。恐らくこれが元ネタだと思います。
最後にデクたちが新しい家族(チーム)の結成を宣言するあたり、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っぽいですよね。映画に影響を受けたかどうかはわかりませんがトラクテンバーグ監督は少なくともコミックのドラックス・ザ・デストロイヤー(映画版にも出てくるガーディアンズの主要メンバー)にはインスパイヤされたと言っています。
今回デク役のディミトリウス・シュスター=コロアマタンギは、デクの毒父ニョールも演じており、またティア役のエル・ファニングは悪の姉テッサも演じています。つまりメイン・キャストの2人は一人二役で対となるキャラも演じているわけです。
いかがだったでしょうか? そもそもプレデターは日本人に、日本の特撮ファンにも愛されるキャラではないかと思います。洋物のホラーモンスターというより、どこかウルトラ・シリーズに出てくる星人っぽいですよね。『プレデター:バッドランド』の成功を受け、例えばバルタン星人のヒーローが活躍する映画なんてあったら面白いですよね。
(文/杉山すぴ豊)
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『プレデター:バッドランド』
大ヒット公開中!
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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