連載
杉山すぴ豊の、アメキャラ映画パラダイス

ファン(FAN)以外にもファン(FUN)な『アクアマン/失われた王国』

『アクアマン/失われた王国』 2024年1月12日(金)全国ロードショー

『アクアマン/失われた王国』は、アメコミ・ヒーロー映画最新作です。アクアマンはス-パーマン、バットマン、ワンダーウーマンと同じDCコミックの陣営。アクアマンとは名前の通りアクア=水に関係がある超人で、海底王国アトランティスの王です。地上人(つまり我々人間)の父と海底人の女王の間に生まれた海のヒーロー。コミックでのデビューは1941年。アメコミのスーパーヒーロー物は1938年にスーパーマンがデビューしたことで始まりました。面白いのはその後に登場するヒーローたちはスーパーマンとどのように差別化するかでキャラ立ちをはかってきました。スーパーマンが宇宙人なら普通の人間がヒーローとなるバットマン。スーパーマンが男だから女性ヒーローのワンダーウーマン。そしてスーパーマンが空を飛べるなら海を行くアクアマンというわけです。アクアマンの持っている能力の中でとりわけユニークなのは海の生物(要は魚や鯨、蛸!)と意思疎通できるということです。

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アニメ化もされDCの中でも人気ヒーローの一人でしたが、2018年に映画化されました。この時DCは2013年のスーパーマン映画『マン・オブ・スティール』から始まる1つの世界観の中で沢山のヒーロー映画を展開しています。今まで封切られた『バットマンvsスーパーマン:ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』『ジャスティス・リーグ』『アクアマン』『シャザム!』『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』『ワンダーウーマン1984』『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(配信、ブルーレイ等でのリリース)『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』『ブラックアダム』『シャザム!~神々の怒り~』『ザ・フラッシュ』『ブルービートル』(日本は劇場公開せず配信やブルーレイでのリリース)は同じ世界の中の出来事なのです。『アベンジャーズ』を核とするマーベル・シネマティック・ユニバース/MCUに対し、このシリーズはDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)ないしDCスナイダーバース(キックオフとなる『マン・オブ・スティール』の監督がザック・スナイダーだったため)とメディアやファンの間で呼ばれています。というわけでこの『アクアマン/失われた王国』はDCEU最新作となります。『アクアマン』映画としては2作目、なおこのヒーローは『ジャスティス・リーグ』にもメイン・キャラの一人として活躍するので3度目のスクリーン登場です。(他にカメオ出演している作品もあります)

実は今回の『アクアマン/失われた王国』、ちょっと心配だったのですね。というのもDCEUは本作を持って一旦終了。2025年7月に公開される、新スーパーマン映画『スーパーマン:レガシー』からDCユニバース/DCUという新しい映画世界がスタートすることが決まっています。本来DCEUがもっと続く前提の中で作られていた作品だったので次作につながる伏線とかあったらしいのですが、DCUが始まることが決まったためそういう部分をすべて削除して編集したとか、コロナ禍で製作がうまくいかず大幅な撮り直しをしたとか、さらに重要出演者の一人がとあるスキャンダルを起こしバッシングを受けているとか、とにかくガタガタの製作状況でした。

だから作品の質にも悪い影響が出ているのではないか?と。しかし、そんな不安を吹き飛ばす快作でした! ヒーロー物というと悪い奴を正義の超人が倒す、というのが基本ですが、ヒーロー映画である以上にSF海洋冒険活劇としての色合いが強い。海の『スター・ウォーズ』、ちょっとコミカルでポップな『アバター』みたいな楽しさがあるんです。その証拠にヒーロー映画の定番である、大都会(街中)で主人公が市民を守るために立ち上がるというシーンはない。舞台のほとんどが海底王国や悪の秘密基地がある島(ちょっと007っぽいです)。まずこうした世界のビジュアルやアイデアが楽しい。さらにアクアマンは海のヒーローですから、蛸をお供に巨大なタツノオトシゴにまたがって、SF少年の心をくすぐるデザインの潜水艦や重機動メカ、不気味なゾンビ半魚人軍団、目から赤い破壊光線を放つパワード・スーツ型のヴィラン(その名もブラックマンタ。本キャラのデザインのインパクトは大)と戦います。この紹介だけでワクワクしてくるでしょう?

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監督は前作に続きジェームズ・ワン。『ソウ』や『死霊館』等のホラーやワイスピ史上最大のヒット作『ワイルド・スピード SKY MISSION』の監督です。ホラーとアクションの名手なだけにアクション描写とかビックリさせる演出がうまい。そしてアクアマンを演じるのはジェイソン・モモア。最近だと『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』のヴィランを演じていました。これまた豪快な兄貴って感じで、破天荒なアクアマンのイメージにピッタリ。兄貴と言えば今回のアクアマンは前作でライバルだった異父弟のオームとコンビを組みます。今回のアクアマンとオームはMCUのソーとロキのようで、この2人のバディ・ムービィとしても魅力的。基本パート2だし今までのアメコミ映画の流れの中の1本ではあるのですが、他のヒーロー映画を観ていなくても全くと言っていいほど問題ないし、また前作が未見でも観ているうちに登場人物の関係とかわかるのですぐになじめます。

今年(2023年)は『ザ・フラッシュ』というDCヒーロー映画がありました。この映画僕は大好きで、DCコミックやDC映画好きに向けた素敵な贈り物だったと思うのです。ファン(FAN)向けの作品でした。一方この『アクアマン/失われた王国』はDCファンというよりも、より間口が広い娯楽大作で、とてもファン(FUN)なエンタテインメントです。

(文/杉山すぴ豊)

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『アクアマン/失われた王国』
2024年1月12日(金)全国ロードショー

監督:ジェームズ・ワン
出演:ジェイソン・モモア、パトリック・ウィルソン、アンバー・ハード、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、ニコール・キッドマン、ドルフ・ラングレン、ランドール・パーク

配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/
予告編:https://youtu.be/myeXKJMEyJ8?si=ThpkNhdM3Z7DJauC
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杉山すぴ豊

アメキャラ系ライターの肩書きで、アメコミ・ヒーロー映画やSF、モンスター映画についての伝道活動を、雑誌、TV、WEB等で展開。 映画「アメイジング・スパイダーマン」「アベンジャーズ」の劇場パンフレットにも寄稿しています。映画「サラリーマンNEO劇場版(笑)」にCMクリエーター役でなぜか出演。 AOL等でもコラム展開中。
また人気と評判の(笑)ブログはこちら http://supi.wablog.com/

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