第69回 『アリータ:バトル・エンジェル』の魅力
『アリータ:バトル・エンジェル』 2月22日(金)より全国公開
『アリータ:バトル・エンジェル』は『アバター』のジェームズ・キャメロンがプロデュース、『シン・シティ』等のロバート・ロドリゲスが監督したSFアクション映画です。主人公は無敵のサイボーグ少女。コミック原作ですが、アメコミではありません。日本の「銃夢(がんむ)」というマンガおよびそれを基にしたアニメが原作です。僕は「銃夢」そのものについて語れるほど詳しくはないのですが、映画が素晴らしかったので、原作(木城ゆきとさん)を改めて読んでみようと思います。
26世紀の未来が舞台。300年前に大きな戦争があり、裕福な人々は空中都市に住み、そうでない人たちは地上に住んでいます。またサイボーグが普通のことになっている世界です。
地上で故障したサイボーグたちを治している医師(技師)イドはスクラップ場で少女サイボーグの残骸を見つけます。その頭部の脳がまだ生きていることを知ったイドは彼女を復活させ、アリータという名前を与えます。アリータは目覚める前の記憶をすべて失っていました。果たして彼女の正体は?
アリータの自分探しを軸に彼女とグロテスクなサイボーグたちとの戦い、さらにこの世界で人気という設定のバイオレンスなスポーツ"モーターボール"への参戦とスーパーアクションの見せ場が連続です。
本作はジェームズ・キャメロンの名がフィーチャーされていますか、アクション描写のさえはさすがロドリゲス。カタルシス満載のバトル・エンタテインメントに仕上がりました。
主人公のアリータをローサ・サラザールという若手女優(ネットフリックで話題の『バード・ボックス』にも出ています)が演じていますが、彼女の表情や演技をデジタルで取り込んで"アリータ"としてに加工して劇中に登場させています。というのもジェームズ・キャメロンは原作へのリスペクトから、アリータをあえて原作の絵のとおり、つまり目が大きく、口が小さく、全体的にハートのような形をした顔で登場させたかったのです。
実はここで最初物議を呼んだのですね。だったら実写映画にせずにCGのアニメ映画にすればよかったのではないかと。実写の俳優たちの間に、いかにもアニメ顔のキャラがいるのは不自然だと。
僕も最初はここがひっかかっていたんですが、実際完成され作品を観て、全くそれが気になりませんでした。アリータはとても愛らしく、彼女の切なさに共鳴し、彼女が戦うシーンでは思い切り応援したくなる。試写を観終わった後、皆が「アリータ
が可愛かった」と言っていたぐらいです。
劇中"少女"だったアリータが"戦士=女"として覚醒します。
それはキュートからセクシーへの変換であり、ゾクっとします。
そう、この映画の一番の挑戦は、アリータを原作の絵に近いイメージで実写映画に登場させるだったわけですが、キャメロンたちは見事に成功しました。
考えてみればキャメロンの『アバター』でも、僕らはあの青い肌のエイリアン種族たちに共感しましたよね。そのノウハウがあったのでしょうね。
それは目の色だったり、肌の感じだったり、ちょっとした仕草だったり、と、ものすごく細かな調整をつみあげて実現したのでしょう。その執念と、それをやりとげた製作者たちに敬意を表します。
かつこれはやはり元の演技が素晴らしいからで、ローサ・サラザールさんにも拍手。
と理屈っぽくほめていますが、とにかくすごい!×かっこいい!×かわいい!=面白い!というほめ言葉しか思いつかない。
SF映画として、アクション映画として、そしてアイドル映画として(本当にアリータかわいいから)必見です。
なお「銃夢(がんむ)」はアメリカでは Battle AngelAlitaというタイトルで翻訳されましたが、この映画は「Alita:Battle Angel」とAlitaが先に来ます。
これはジェームズ・キャメロンの映画は
『ターミネーター』『ターミネーター2』『トゥルーライズ』『タイタニック』『エイリアン2』『アビス』『アバター』
とTかAで始まるのがジンクスで、だからAlita=アリータを頭にもってきてそうです(笑)
(文/杉山すぴ豊)
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『アリータ:バトル・エンジェル』
2月22日(金)より全国公開
製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ
配給:20世紀フォックス映画
原題:ALITA: Battle Angel
2019/アメリカ/122分
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/
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