第50回 日本発のスーパー戦隊を逆輸入! 『パワーレンジャー』ってなに!?
映画『パワーレンジャー』 7月15日公開!
日本発で海外でローカライズされ成功したコンテンツと言えば"ゴジラ""トランスフォーマー"ですよね。ここで言うローカライズとは、単に"日本のものがそのまま輸出された"ではなく、それが原案となって、現地のコンテンツとして作り直された=ハリウッド等で映画化された、というような意味です。
そして最もこのローカライズが成功した、日本発のコンテンツが"パワーレンジャー"でしょう。日本の"スーパー戦隊もの"を海外展開した、世界的に人気のヒーローコンテンツです。92年に日本で放送されていた東映の特撮ヒーロー番組「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(75年の「秘密戦隊ゴレンジャー」から数えて16作目)の特撮とアクション・シーンを流用し、ドラマ部分をアメリカの俳優たちで撮りなおして組み合わせて「マイティ・モーフィン パワーレンジャーズ」というタイトルでアメリカの子ども向け番組として放送。たちまち大ヒット作に! モーフィンとはmorphing。変身する、という意味です。
アメコミ・ヒーローは基本コスチュームに着替える的な変装的な変身ですが、パワーレンジャーの場合、あのスーツを着るというより、あの格好にまさに変身するのでそこが大きな特長でもあり、"モーフィン"をたたせたのでしょう。以後、この方式で、日本で"XXX戦隊●●レンジャー"が放送されると、翌年それが"パワーレンジャー"の新シリーズとして全米で放送される、という形で続いてきました。なぜこんなにアメリカでウケたのか、諸説ありますが、実は子どもに特化した"特撮ヒーロー番組"というのが当時アメリカにはなかったからのようです。また前述のとおり"変身"というヒーローがあまりいませんでした。(シャザム!やハルクぐらい?)
というわけでアメリカや世界各国で"パワーレンジャー"は人気コンテンツとなりました。僕がその人気を実感したのは、例えばアメリカのトイザらスとかにいくとマーベル、DC、スター・ウォーズに負けないぐらいおもちゃやグッズが占拠しているし、コミコンとか言ってもパワーレンジャーの格好をするファンは大勢います。
先日、この"パワーレンジャー"を支えてきたといっても過言ではない、坂本浩一監督とお話しする機会がありました。坂本監督は、最近では溝端淳平さん出演の映画「破裏拳ポリマー」の監督。(詳しくはこちら)
坂本監督によれば、やはり当初はアメリカ側は、ヒーローたちが名乗りをあげて見栄をきるとか、そういうヒーロー美学がわからず、またミニチュア特撮も、なぜこいつらはおもちゃの国で戦うんだ?(!!??)と理解されなかったそうですし、また単なる勧善懲悪を超えたドラマ性があることもわかってくれなかったが、粘り強く説明し、戦隊の良さを残しながら、立派にパワーレンジャーとしてローカライズされたそうです。坂本監督曰く、やっぱり「恐竜戦隊ジュウレンジャー」から始めたのが良かった。恐竜というモチーフはどこの国の子にも人気があるから、と。なるほど。
そして今年の夏、その「パワーレンジャー」をハリウッド大作としてリメイクした映画『パワーレンジャー』が公開されます。ワクワクするようなヒーロー・アクションであり、SF青春ドラマとしても良く出来ています!
僕が感慨深いのは78年に東映とマーベルが提携して、東映版『スパイダーマン』が作られた話は有名ですが、実はマーベルは戦体ものにも影響を与えていて、スーパー戦隊4作目の「電子戦隊デンジマン」に登場するヘドリアン女王というキャラは、マーベルのヘラという女性ヴィランをもとにしています。この時、ヘドリアンを演じたのが曽我町子さんという女優さんで、彼女は「恐竜戦隊ジュウレンジャー」で、パンドーラというまた別の悪役を演じているのです。そして「恐竜戦隊ジュウレンジャー」が「マイティ・モーフィン パワーレンジャーズ」にローカライズされたとき、曽我町子さん演じるパンドーラのシーンだけはそのまま使われました。ただパンドーラという名前はリタに変更されましたが。
今度の映画版『パワーレンジャー』には、このリタも登場します(演じるのはエリザベス・バンクス。サム・ライミ版の『スパイダーマン』シリーズにも出演していました)。一方、このヘルバイラ女王の元になったヘラは今年公開の『マイティ・ソー バトルロイヤル』に登場! ケイト・ブランシェットが演じるのです。曽我町子さんにゆかりのあるキャラが、同じ年にスクリーンでよみがえるなんて、不思議な縁を感じますね。
なんという偶然でしょうか! 縁を感じますね!
(文/杉山すぴ豊)
※読者の方からのご指摘を受け、記事を一部訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。
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『パワーレンジャー』
7月15日公開!
監督:ディーン・イズラライト
出演:デイカー・モンゴメリー、RJ・サイラー、ナオミ・スコット、ベッキー・G、ルディ・リン ほか
配給:東映
原題:Power Rangers
2017/アメリカ/124分
公式サイト:power-rangers.jp
(c)2017 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.