第49回 9月日本公開『エイリアン:コヴェナント』ってどんな映画?
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- トム・スケリット,シガニー・ウィーバー,ベロニカ・カートライト,ハリー・ディーン・スタントン,キャリー・ヘン,マイケル・ビーン,ランス・ヘンリクセン,リドリー・スコット,ジェームズ・キャメロン,デイビッド・フィンチャー
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考えてみれば、SF映画ファンにとって今年はすごい年で、というのも
エイリアン=『エイリアン:コヴェナント』
ブレードランナー=『ブレードランナー2049』
猿の惑星=『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
スター・ウォーズ=『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
と新作が次々と公開。
そう、かつてのSF映画の最強ブランドが勢ぞろいしているわけです。
一方、洋物モンスター映画好きには
キングコング=『キングコング:髑髏島の巨神』
ミイラ怪人=『ザ・マミー 失われた砂漠の女王』が公開でしたね。
『エイリアン:コヴェナント』はSF映画であると同時に、素晴らしいモンスター映画なので、両方のファンも満足でしょうが。
というわけで今回はアメリカで公開されたばかり(そして大ヒット)、日本では9月15日公開の『エイリアン:コヴェナント』を予習がてらとりあげましょう。
まず『エイリアン』シリーズとは、79年に公開された1作目に端を発し、シリーズ化されたSFホラー映画です。
以後『エイリアン2(86)』『エイリアン3(92)』『エイリアン4(98)』と製作されていきます。
大まかにいうと凶悪な宇宙生物に襲われる人間たちのサバイバルを描いた作品ですが、いわゆる"UFOにのって地球に侵略する"的な話ではなく、キャンプ場にいったらジェイソンがいた、海にいったらジョーズがいた的に、宇宙でその凶悪生物と人間が出くわし悲劇がおこる、というパターン。
限定された宇宙船内や惑星を舞台にお話が展開され、エイリアンが地球に来ることは"原則"ないのです。
宇宙船内(ないし閉鎖空間)を舞台に凶悪な宇宙生物と乗組員の死闘を描くというプロット自体は、過去にも似たようなSF映画があったそうですが
このシリーズが人気を博した理由は、エイリアンの造形と設定のユニークさと特に1作目の見せ方(映像のセンス)。
まず卵状態で、そこからカブトガニみたいなものがとびだし人の顔に付着(このときの形態をフェイスハガーといいます)、
フェイスハガーは寄生した相手の体内に幼生をうみつけ、その幼生は寄生した人間の胸をつきやぶって出てきます(チェストバスター)
そして完全な成体になり(これについては、ビッグチャップともよばれるらしいのですが、フェイスハガーやチェストバスターほどポピュラーな愛称でない気が)相手を襲います。
デザインを見るとわかるのですが、すべて"生殖器"をモチーフにしたデザインの怪物で、生殖行為をホラーとして描いているのです。
この怪物のデザインを担当したのがスイスの画家のH.R.ギーガーです。
そして1作目の監督は、CMから映画界にうつった映像派のリドリー・スコット。
ひとつ間違えるとすごくチャチなモンスター映画になってしまう題材を緊迫感ある映像で見せてくれます。
『エイリアン』1作目の公開は全米では79年5月25日。実はこの2年前の同じ日に『スター・ウォーズ』が公開され大ヒットとなり、同じ20世紀フォックスの映画であったことから縁起が良いとの理由でこの日に公開されたそうです。
噂では、20世紀フォックス内でこの企画を通すとき
"『オーメン』(オカルト・ホラー映画の名作で大ヒット作:これも20世紀フォックス)の怖さと『スター・ウォーズ』の宇宙を足したような映画"と説明されたそうです(笑)
エイリアンというキャラ自体のユニークさとシリーズ化されるにつれ、特に1作目がもっていた神秘性や怖さが減っていたのも事実。
もう一度この精神で『エイリアン』をリブートさせようと、1作目の監督リドリー・スコットは考えたらしく、そうして作られたのが『プロメテウス(12)』でした。
これは正確に言うと"エイリアンの映画"ではなかったのですが、
ここで起きた事件がきっかけで、あのエイリアンが(どうやら)生まれた(らしい)という感じでした。
映画としては面白いのですが、ストレートなエイリアンのリメイク的なものを期待すると、ちょっと違います。
それをリドリー・スコットもわかっていて、
今回の『エイリアン:コヴェナント』は、
『プロメテウス』と『エイリアン』の間をつなぐ作品。
映像クリップ等を見る限り、これぞエイリアン!的な怖さや雰囲気がただよっています(全米でも高評価&大ヒット)。
時系列的には
*2093・・ 『プロメテウス』
*2104・・ 『エイリアン:コヴェナント』
*2122・・ 『エイリアン』
という流れらしく、
つまり『プロメテウス』の悲劇からほぼ10年後、『エイリアン』の事件の20年前が
この『エイリアン:コヴェナント』です。
なおエイリアン・シリーズと言えば、シガニー・ウィーバー演じるリプリーという
キャラが有名ですが"リプリーは2092年の生まれ"という設定があります。
リドリー・スコットは、さらに、
『エイリアン』につながる前日談=「Alien: Awakening(仮)」
を検討中らしく、ただこの作品が
『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』の間
『エイリアン:コヴェナント』と『エイリアン』の間
なのか諸説あります。
個人的には、より『エイリアン』に近い
後者のパターンでいってほしいのですが。
さて先ほど「"原則"地球に来たことがない」と書きましたが
20世紀フォックスの誇る、もう一人のエイリアン・ヒーロー"プレデター"とエイリアンが戦う番外編が2つ作られており、これらは地球が舞台でした。
なお来年、新しい『プレデター』の映画も公開されます!!
(文/杉山すぴ豊)