もやもやレビュー

海賊ラジオの時代をチラ見『パイレーツ・ロック』

パイレーツ・ロック [Blu-ray]
『パイレーツ・ロック [Blu-ray]』
フィリップ・シーモア・ホフマン,リチャード・カーティス,リチャード・カーティス,リチャード・カーティス,フィリップ・シーモア・ホフマン,ビル・ナイ,リス・エヴァンス,ニック・フロスト,トム・スターリッジ,ウィル・アダムズデイル,エマ・トンプソン
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音楽のない人生なんて想像できるものか!と言い切る現代の音楽愛好家にとって、いまや音楽の掘りどころは山のようにある。音楽配信サービスはもちろん、オンラインラジオから無料動画サービスまで......スマートフォンさえあれば、しばらくは困らない。でも、数十年前はどうだろう。

時を巻き戻して、1922年。イギリスでは、英国放送協会(以下、BBC)が設立された。ところが当時のチャンネル数はたったの三つ。流れてくるのは、政府が国民に提供したい情報だけ。「こんな退屈なものより、流行りのロックやポップスが聴きたいんだ!」ということで、他国のラジオ局が解禁されたタイミングで、国民の半数近くはBBCを離れていった。ところが今度は、レコード会社と契約を結んだ大物サウンドしか流れてこないことに味気なさを感じ、再び音楽愛好家たちはシラケムードに。

そんな倦怠期に新たな風を吹き込んだのが、海賊ラジオ。いかにも怪しい名前を持つこの放送スタイルは、送信機とアンテナを積んだ船を出し、海のうえをぷかぷか浮かびながら音楽を届ける、というもの。何せイギリスの領海を出てしまえば法が適用されなくなるため、どんな音楽をかけようと自由! イギリス国民がはじめてローリング・ストーンズを聴いたのも、海賊ラジオを通してだったとか。

そんな海賊ラジオのDJたちが送った海上ヒッピー生活を覗き見できるのが、映画『パイレーツ・ロック』(2009)。8歳のころ、こっそり海賊ラジオを聴いていたと言うリチャード・カーチス(『ラブ・アクチュアリー』を手掛けた彼)が監督を務め、故フィリップ・シーモア・ホフマンがカリスマDJとして出演。「そんなバカな!」なエンディングに見舞われるものの、軽やかな気持ちで楽しめる。

(文/鈴木未来)

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