恋愛映画なのかギャグ映画なのか判断に迷う『後悔なんてしない』
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昨今、巷ではLGBTの権利向上に関する運動をよく見聞きする。筆者がかつて勤めていた会社ではゲイ、レズビアン、トランスジェンダーなどさまざまなセクシャルマイノリティが差別を受けることなく普通に働いていたので、運動と言われても「世間ではそんなに酷い差別が横行しているのだろうか?」という疑問が湧く。
まぁ、自分の身の回りに差別がないからといって、存在しないと断じるのは愚の骨頂なのでレンタルビデオ店から本作を借りて視聴した。
孤児院出身の主人公スミンは工場や運転代行などの仕事を掛け持ちする苦労人。ひょんなことから裕福なジェミンと知り合い互いに惹かれ合う。しかし、スミンが工場をリストラされることになった時、ジェミンが工場の社長の息子だと知ることになる。スミンに好意を抱くジェミンは彼の馘首を何とか阻止しようとするが、却ってスミンの恨みを買うことに。
ジェミンはスミンに振り向いてもらおうと様々な努力をするが、スミンの態度は硬直したまま。
ざっとあらすじを書いてみたが、別に本作で男性同士の愛を描く必要があったのか甚だ疑問だ。ところどころゲイに関する問題を提起されているものの、本筋は上記の通りなので登場人物を男女に入れ替えても物語は成立するように思う。もっとも、スミンが男娼になるという設定はあまりに唐突過ぎて「何でだよ!」というツッコミを入れたくなるが。その他にも、かつての昼ドラを思わせるような荒唐無稽な展開が続き、違う意味で飽きさせない内容となっている。
以前、韓国人の友人から「韓国映画はとかく演出が派手だ」と教えてもらったことがある。筆者は韓国映画に詳しくないので、本作が韓国映画のスタンダードなのか知る由はないが、邦画で同様のことをやった日には酷評の嵐に見舞われるのではないだろうか。映画はファンタジーだけれども、物には限度がある。海外の映画なので「ああ、外国ではこういうことが普通なのだろうな」と距離を置いて鑑賞できるが、日本に住む我々が昼ドラばりの演出を見せられたらデタラメ過ぎて笑うしかない。果たして本作は恋愛映画なのか恋愛映画っぽいギャグ映画なのか判断に迷うところだ。
余談だがゲイの知人に本作を観た感想を述べたところ「ゲイだろうがノンケだろうが、性的志向で趣味が固定される訳ねぇだろ、バカ」と呆れられた。
(文/畑中雄也)