恋愛漫画を実写化するとコメディになる『パラダイス・キス』
- 『パラダイス・キス [DVD]』
- 北川景子,向井 理,山本裕典,五十嵐隼士,大政 絢,賀来賢人,加藤夏希,新城 毅彦
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本作は2010年に600万部の売上を叩き出した超人気漫画を実写化したもの。昔から売れている恋愛漫画は実写化される傾向にあるが、寡聞にして成功した例を知らない。
「どうして漫画は人気なのに実写化は大惨事になるのか?」について、いくつか恋愛漫画の実写化を視聴した結果、漫画では様になる台詞も実在の人物が発すると途端に陳腐になる傾向がある。
オブラートに包んだが、実際は陳腐どころではない。2次元のキャラクターが発する名言も3次元の人間が口にした瞬間、どんな美男美女でも鳥肌が立つほど気持ち悪い。やはり2次元と3次元は別物なのだと考えた方がいいだろう。恋愛映画の実写化は誰も幸せにしない。もっとも、利益が見込めるから制作される訳で、この阿鼻叫喚の地獄絵図のような作品をありがたがる人間がそれなりに存在するということの方が恐ろしいが。
600万部も売った漫画原作のあらすじを紹介するのは蛇足だが、未見の方に向けて大まかに説明すると、主人公の早坂紫(北川景子)は受験勉強に追われる自分に悩んでいたところ、矢澤芸術学院の生徒たちにショーモデルとしてスカウトされる。当初はモデルを馬鹿にしていたが、生徒たちと交流を深めるうちに自らモデルを志すようになる。
恋愛映画なので、矢澤芸術学院のデザイナー志望の小泉譲二(向井理)と恋仲になるが、譲二は夢を叶えるためにパリへと渡り悲恋に終わる。
本作のキャッチコピーは「自分の可能性を信じなきゃ何も始まらない」。テーマがファッションに情熱を燃やす若者の群像劇なので、表面的なコピーに偽りはないが、いくら美男の役者でも上記の台詞を口にしたら違和感があふれ出る。その他、諸々突っ込みどころはあるけれど、都度で説明していたら下らない本が1冊できるだけの分量になるので割愛する。
結局、漫画の台詞は架空の人物が発するから感動なり納得なりする訳で、実在の人物が述べたら滑稽になってしまう。コメディとして視聴するなら最適かも知れないが、多分スタッフは真面目に作ったと思われるので笑ってはいけないのだろう。もっとも、観賞中ひたすら爆笑してしまったが。
(文/畑中雄也)