プロレスラー出演映画シリーズ:バティ兄貴の出世作だけどヤラレシーンの方が印象的な『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
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WWEスタジオ制作作品以外では相変わらずなかなか見当たらないプロレスラー出演映画。WWEでも活躍したジョン・モリソンことジョン・ヘニガンは、「Lucha Underground」等での現役選手活動と並行して俳優としても頑張っていますが、どマイナー作品の主演作もあるにはあるけれど、さらにどマイナーなTVドラマやらダニー・トレホ先生の出演作(日本未配給の魅惑のポンコツ作品)での端役が限界。
故に007の最新作『007 スペクター』など大作の主要キャストの座を掴んだ、我らがバティスタ兄貴(デビッド・バウティスタ)はプロレス出身俳優としてもっと評価されるべきでしょう。
そんなバティ兄貴の出世作が、「マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)」作品群のひとつ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)。ヴィン・ディーゼル兄貴とは、2013年の『リディック:ギャラクシー・バトル』に続き二度目の共演となります。
監督は、トロマ・エンターテイメント出身として知られる奇才ジェームズ・ガン。
『スクービー・ドゥー』シリーズの脚本でひたすら脳天気でクソの役にも立たないティーン向け作品を世にひり出し、初監督作の『スリザー』ではノリで押し切るグチャドロホラーで爽快なトロマイズムを炸裂させ、ほぼ自主制作の『スーパー!』でのサイコで辛辣な素人ヒーローコメディで奇天烈な世界観を提示しました。
チビッコには見せたくない作品ばかりを産み出してきたガン監督による本作は、その経歴通り、他のMCU作品とはかなり毛色の異なるヒーローモノとなっているのが特徴。
本作の中心人物となる、地球人と宇宙人の間の子であるスター・ロードこと「ピーター・クイル」が、幼少期に宇宙海賊に拉致されたのが1988年。その年代のカルチャーが劇中での"舞台装置"としてネジ込まれているんですね。中でも、初期型ウォークマンや70~80年代のヒット曲が効果的に使われているため、アラサー、アラフォー世代に突き刺さる"何か"を持った作品になっているワケです。
さて、本編について。スター・ロードが狙うあるオーブを巡って、緑色の肌の女暗殺者「ガモーラ」、遺伝子改造されたアライグマの「ロケット」、その相棒で樹木型宇宙人「グルート(ヴィン兄貴が声とモーションキャプチャーを担当)」の4人での奪い合いとなるも、一帯の星域を支配するノバ帝国軍によって全員お縄に。
しかし、当のオーブが惑星を破壊するほど危険な代物だったため、安全な買い手に託すべく、スター・ロードたちは脱獄を計画。そこで最後の仲間となるのが、バティ兄貴演じる元地球人の超人「ドラックス」。
特殊メイクを施した灰色マッチョボディが期待を煽るけれども、妻と娘を殺した宿敵ロナンとの初戦ではパンチは空を切り、タックルは吹き飛ばされ、見事にボコボコにされるヤラレっぷり!
近年のプロレスでの塩味濃厚な(要はしょっぱい)バティ兄貴当人同様のパフォーマンス&扱いに、筆者的には「出世作でも塩ってるやないかい!」と大喜び。バティ兄貴はこうでなくっちゃ!というと怒られそうですが、筆者はそんな兄貴が大好きなんです。もちろん、後半には兄貴の見せ場もあるのでご安心を。
物語はオーブを狙うロナンとの対決へと進んでいくワケですが、このロナンさん、顔面に岩海苔が生えてるような風体ですが、それを抜かせば、格好良いヴィラン(悪役)です。
また各作品で良い味を出したキャラを配置してくるガン監督ですが、幼少期のスター・ロードを拉致った育ての親でもあるヨンドゥは、本編のエピローグまで観ると、画面の中のヨンドゥと共にニヤリとしたくなるハズ。
ネタ的にも意外と大人向けな本作。テンポが良いといえば良いけど、逆にいえばバタバタした感も拭えない面もありますが、今回はチーム結集のエピソードということで、2017年公開予定の続編に期待したいところ。正統派の『アベンジャーズ』も嫌いじゃないけど、トロマ好きとしてはガン監督のこちらに肩入れさせて頂きます!
(文/シングウヤスアキ)