プロレス界のPV詐欺どころではない直球の珍予告編パロディ集『ビル・マーレイの珍作フライド・ムービー』
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プロレス界で選手のプロモーションビデオが制作され始めてから早30年余。期待の新人であれば、デビュー予告映像が作れられるのは当たり前。定着させたい決め台詞や決め技の映像を使ったり、思わせぶりなシルエットだったり、渋いナレーションでカミングスーンだの言ってるワケです。
そう、ハリウッド映画の予告編(トレイラー)も割りとそんな感じのが多いですよね。
映画界とも関わる部分では、『シン・シティ』『マチェーテ』シリーズのロバート・ロドリゲス監督がオーナーのTV局「エル・レイ・ネットワーク」が展開するルチャ・リブレ団体「Lucha Underground」のPVは、バカバカしくもゴージャスなロドリゲスイズム全開の出色の出来映え。最近シーズン2も開幕し、新たなPVの仕上がりに期待が募ります。
そして映画の予告編といえば、欧米コメディ番組でスケッチ(コント)にされる定番ネタ元でもありますが、1970年代後期、映画の予告編などをネタにしたオムニバススケッチ映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』がスマッシュヒット。
『ケンタッキー~』は日本でもカルト人気を博してリバイバル上映も果たしていますが、同系統作品が尽く国内円盤化されぬ状況下で、『ビル・マーレイの珍作フライド・ムービー(旧題:アメリカ発 珍作映画情報)』は、まさかのDVD化を遂げた奇跡の作品......。
ってもビル・マーレイ御大が出演しているのは脱獄ネタのスケッチのみという、いわゆるビッグネーム詐欺ですね。
基本的に映画の予告編のパロディと上映前CMのスケッチ集となっており、ウディ・アレンの複数作品やチャップリンの『キッド』のパロディの他、天下の○ィズニー創始者をネタにしたり、(『ベイブ』に先駆けた?)豚がしゃべるスケッチなど、盛り沢山ではあるのです。
しかし、今の感覚&日本人の視点から観るとダダスベリにも程がある、精神修行のお時間と言い換えても過言ではない74分が待っているんですねコレ。修行不足の筆者は完全に観終わるまで1週間を要しましたよ!
予告編は良かったのに本編を観たらイマイチだった"予告編詐欺"も良くある話ですが、本作はそもそもがパロディであるが故に、全てがどうしようもない。観てしまった自分を説教したくなる、そんな作品。
プロレス界でもデビューPV詐欺はあります。実物はなんだかショボくて観てるこっちがそわそわしちゃう選手だったりするケース。WWEの「モルデカイ」や「クリス・マスターズ」、さらに史上最大の契約金で入団したという触れ込みで盛大にスベった「MVP」などなど(この人は持ち前のトークスキルで持ち直しましたが)。あぁ、思い出すだけで目が遠くなる......。
さておき、色々難易度の高い本作ですが、珍作を愛でる精神を養うには打って付けの逸品であることは確か。筆者的には、スケートボードに乗った不良達が暴れ回り、仲間が憤死して埋葬されるまでの恐ろしくつまらない「地獄のスケーター軍団」や、『SF/ボディ・スナッチャー』を元ネタにした直球過ぎる下ネタスケッチ「ペ○ス・スナッチャー」辺りがツボに来ちゃいましたよ!
(文/シングウヤスアキ)