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プロレス×映画

M・フォーリーと絡める内容が一切無いけど、ルチャなら絡むメキシコのG・リッチー風犯罪モノ『カクタス・ジャック』

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 11月中旬に公開された最新作『コードネーム U.N.C.L.E.』で"らしさ"を取り戻したという声も多い、ガイ・リッチー。初期作品における、半ば群像劇の形を採り、シャレオツサントラに絡めた軽妙な会話パートとハイセンスなアクションパートの構成美は熱狂的なファンも生みました。
 事実2000年以降、ガイ・リッチーもどきのシャレオツ犯罪モノがボンボコと量産されましたが、今回ご紹介するメキシコ製作の『カクタス・ジャック』(2004)も"ガイ・リッチー風"として語られる1本です。

 本作は、不運の連鎖系キッドナップモノで、濃い目のキャラが主人公たちをやや食ってる感もあるという辺り(※)も含めて、実に"ガイ・リッチー風"な作風。
 でも、いわゆる配給会社によるテキトー邦題系なので、ミック・フォーリーのギミックのひとつ『カクタス・ジャック』に絡める内容が一切無いやんけ!

 とまあ、筆者の困惑はさておき、あらすじです。

 主人公ジャックは、社長である悪徳実業家カボスの娘に手を付けたことで、社長室に呼び出されるも、そのカボスはゴルフボールで足を滑らせ失神。狼狽するジャックは親友ムドを呼びに行くが、その間に(カボスに恨みを持つ)掃除係のチーノが気絶したカボスから身ぐるみを剥いでトンズラ。
 知らぬ間に下着姿になっていたカボスをひとまず車のトランクに押し込んだジャックたちは、顔なじみの荒くれ者ルベンとトニーに助けを求める。
 一方、地下駐車場ではチンピラ二人組がカボスらしき男の誘拐を実行。リーダー格のボッチャは父チーノの怨みを晴らすためにカボスを誘拐したつもりになっていたが、顔に袋をかぶせた男は正にその父チーノ。それも気付かずに小指を切り落とし、カボスの妻から身代金を取ろうとするが......

 てな感じで不運が交差&連鎖する展開に雪崩れ込みますが、プロレス的に注目したいのが、元強豪ルチャドール・マスカリータという設定のルベン。クスリでハイになって視た妄想では、マスク姿でゾンビと闘ったり(締めに美女宇宙人軍団が出てくる辺り完全にルチャ映画風演出)、劇中後半にも素顔でプロレス技(古典系)を見せてくれます。

 ルベンの相棒"人喰い"トニーもまた濃い。このちっちゃいオッサンがルベン以上の喧嘩屋で、1人で20人近くのチンピラをブチのめす場面も。音だけの演出ですけど! さらにはカボスの妻を虜にしちゃう性豪なのです。

 他にも前半にしか出て来ない斜視おじさんやら色物外野勢がやたら目立っているこの感じは、主人公たちがほぼボコられるか巻き込まれているだけという演出にもあるのでしょう。
 この主人公たちの扱いは、プロレスのIWA JAPANにおける、色物ギミックレスラーのUMA軍団が話題の中心になる中、生え抜きの所属日本人選手として日陰で頑張っていた時期の松田慶三に重ならないでもないかも。

 作品自体は、タランティーノ風味も感じなくもないですが、初期ガイ・リッチー風の抑えた笑いとアクション、カットつなぎも小気味良く、映像だけでも楽しめる逸品となっています。

(文/シングウヤスアキ)

※ ヴィニー・ジョーンズのコワモテキャラや『スナッチ』の"弾丸をくぐる男"ボリス・ザ・ブレイドなどの強烈キャラ。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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