カットされるのもわからなくはない投げっぱなしジャーマンなエンディングの『バンデットQ』
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視聴ターゲットや世相に合わせて本来の内容を編集して公開するのはよくある映画界の話ですが、配給先のお国柄に合わせて独自の編集が入ることも。
その例として日本での公開時、配給会社の"意図的な編集"の犠牲になったというのが『バンデットQ』(1981)。
奇才テリー・ギリアム監督が『未来世紀ブラジル』の製作費を稼ぐために企画した本作は、衝撃のエンディングが波紋を呼んだものの、異色ファンタジーとしてヒット作となり、ギリアム作品の中ではアメリカでの興収が最も高いんだそうな(世界規模だと『12モンキーズ』)。
歴史好きの少年ケヴィンが、時空を行き来出来る魔法の地図を盗んだ6人の小人との出会いを機に、ドタバタ時間旅行で憧れの偉人たちに遭遇。そして魔法の地図を狙う魔王との激突の果てには......という児童冒険小説然とした内容。
しかし、小人たちは性悪、出て来る偉人はクズ野郎揃い。どこか見る者を不安にする衣装やセットに常軌を逸した感のある奇抜な演出。いわば「見世物小屋」的なケレン味とブラックジョークが散りばめられたギリアム監督らしい作品です。
ところが日本ではあくまで"ピュアな子供向け冒険モノ"扱い。しかも地方ではアニメ映画『幻魔大戦』との2本立てという時間的制約により、下ネタ&暴力的シーンに加え、主人公の人物像を示す冒頭シーンや物議を醸したエンディングもカット。口当たりを良くする"編集"のせいで逆にスッキリしない後味を残してしまったのだとか。
日本国内でのWWE番組も、今は米本国と同じ内容で放送されていますが、かつては「国際(編集)版」が放送されていた時期がありました。
主に中堅勢の試合がカット対象でしたが、ローカルの放送コードの影響か、WWEの特徴であるお下劣過激シーンまで対象に。
マクマホン会長とヒール軍団が糞便まみれ(勿論偽物)になったシーンや、エッジとリタ(ヒールカップル)がリング上に設置したベッドでニャンニャンした(布団を被ってそれっぽく)シーンなどなど、国際版では尽くカット。
翌週の振り返り映像にはそのシーンが含まれているので「こんなシーンあったんかいな!」的なことがままありました。
本作の問題のエンディングが削られたのも似たような理由なのでしょう。
ショーン・コネリー師匠演じるギリシャの偉人アガメムノンが、現代に戻ったケヴィン君を救出する消防士として再登場するのですが、両親に起こる衝撃の出来事の続けざま、コネリー師匠が"それどういう意味やねん!"的なことをして颯爽と走り去って終わっちゃうんだもの。
作品性としてはカットしちゃダメだろと思う一方で、カットされるのも仕方ない気がしないでもなかったりする、投げっぱなしジャーマンスープレックスな結末なのです。
WWEでもベビーフェイスがヒールに襲われ、救援が来て大乱闘のまま幕切れ......みたいなエンディングがよくありますが、実は放送終了後、収録会場の観衆に対する「オチ」としてボーナスマッチ(ダークメインイベント)が行われることも。
ただそのオチは本作とは違い、ベビーフェイスが勝って観客の溜飲を下げる良心的なオチですけど!
(文/シングウヤスアキ)