レスラー出演映画シリーズ:ツッコミどころも多いけど、意外と佳作な『12ラウンド/リローデッド』
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今回の『レスラー出演映画』作品としてご紹介するのは、『12ラウンド/リローデッド』(2013)。
過去に何度かご紹介しているWWEの子会社「WWE Studios」による、所属スーパースター(選手)を主要キャストに起用したビデオスルー作品群のひとつです。
2009年の『12ラウンド』(WWEの看板スターのジョン・シナ主演)の2作目にあたる本作ですが、主演はこの原稿執筆時点(2014年3月末)でWWE世界ヘビー級王者であるランディ・オートンに交代。前作と話的な繋がりはなく「恋人(本作は妻)を人質に取られた男が、犯人が用意した"12ラウンド"の死のゲームに挑む」設定のみが共通します。
非番の夜に遭遇した自動車事故で、1人の女性の命を救うことが出来ず悔やんでいた救急救命士ニックが、その1年後、妻を拉致したと告げる謎の爆弾魔から理不尽なゲームを強いられる、というのがあらすじ。
要は『ダイ・ハード3』をお手本とした「犯人が指示した場所へ行き、指定された条件をクリアしていく」ゲーム進行型スリラー。失敗すれば「多くの人が死ぬ」という警告もお約束。
謎の犯人は街中の防犯カメラをハッキングして主人公を監視しつつ指示を与えるんですが、他にもハイテクなリモート爆弾や、携帯電話のBluetooth同期などのギミックを駆使したりとエンジニア系の犯罪者になっています。
また、この手の作品は「犯人は誰なのか」という謎解き要素を踏まえて、犯人の顔をクライマックスまで伏せたりするものですが、本作の場合、序盤であっさり顔出し(ニックにはわからない)。しかも、毒気皆無のDr.イーブル(『オースティン・パワーズ』の敵役)みたいな風采なので、ラウンド3で早速指示を無視するニックにイラつく様は、正直小物感が拭えません。
そもそもWWEでのオートンはヒールのイメージが強い選手というのもポイント。
ラウンド4で物語の核心に関わる若者をホテルでとっ捕まえる際は、頭突きや首絞めを駆使しつつの脅しの言葉責めだし、ラウンド7では成り行き上とはいえ、警官数名をフルボッコ。こんな救命士いるワケがない!
そんなオートンの隠し切れないヒール感が気になってしまうものの、ラウンドが進むにつれ、犯人が犯行に至った動機が明らかになり「真に罰すべきは誰か。全ては繋がっている」という流れでクライマックスへ。
『SAW』シリーズを思わせる種明かしと断罪行為により、犯人の小物感も払拭されます。
この後半の巻き返しでスリラーものとして楽しめる内容に落ち着くため、意外な佳作としてオススメ出来る作品となっております。
(文/シングウヤスアキ)