"Mr.パーフェクト"ヘニングを思わせるGACKT先生の完璧ぶりが味わえる『BUNRAKU』
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日本の古典芸能「文楽(人形浄瑠璃)」の表現方法をヒントに、ペーパークラフト風のセットやCGI、人形劇やミュージカル的舞台演出で彩る異色のアクション作『BUNRAKU』(2012)。要は『シン・シティ』や『キル・ビル』で確立されたコミック的映像表現を「ワイらならこうや!文楽 is Cool」みたいな勢いで料理した怪作です。
文楽だの響きだけは凄い要素を盛り込んでくる辺りも、ウリ文句だけは立派な新人レスラーのようで、本コラムのお題としてはこの時点で合格でしょう。
舞台は核戦争後のとある大都市。支配者ニコラに復讐を誓う流れ者と、ニコラに奪われた家宝「竜のメダル」を取り戻したい剣客が、これまた女性を巡りニコラとの因縁を持つ謎のバーテンダーの導きでタッグを組む復讐劇。
主役の「流れ者」をジョシュ・ハートネット、準主役となる剣客「ヨシ」をハリウッド初進出となるGACKT先生が熱演しています。
正直、珍作臭溢れるDVDジャケットに武者震いしちゃったのだけども、実際に本作を観てみたら「GACKT先生恐るべし!」と良い意味で衝撃を受けるハメに。
某正月番組での胡散臭いまでのパーフェクトぶりがまさにプロレス的だったGACKT先生ですが、本作のアクションシーンでの立ち回りも素晴らしい。珍作を期待していた側からすると、完璧ともいえる殺陣の出来栄えにちょっと感動しました(ちょいちょい入る日本語台詞が関西弁なのはご愛嬌)。
プロレスで「完璧」といえばWWEで活躍した"Mr.パーフェクト"故カート・ヘニング。各スポーツの超難度技を一発で成功させていく(という設定)PVで有名でしたが、レスラーとしてもプロレス史上屈指の技巧派として尊敬された人物です。幻想と現実のギリギリのラインで何事も完璧にこなすGACKT先生とも重なります。
主役2人の組み合わせ方もなかなかプロレス的。流れ者とヨシは最初の出会いから、店の外でお互い倒れるまで殴り合いに。WWEなら相手が立てなくなるまで闘うラストマン・スタンディング戦です。ちなみに作中のアクションシーンで流れ者はドロップキックやクローズライン、ヨシは腕ひしぎ逆十字固めを披露しています。
殴り合った縁でタッグ結成に至るなどストーリー的にはベタ寄りなので、話が前後する『シン・シティ』よりも素直な作りだし(支配者ニコラが部下より雑魚臭が強いのが残念ですが)、以前ネタにした『アイアン・フィスト』よりもアクション面で見応えがある本作。
敢えてセット&書割感を出すことで普通の映画なら違和感のある演出(トランポリンバトルなど)や場面転換を意識的に盛り込んでいる辺りは好き嫌いが分かれるとは思いますが、個人的には満足度は高い作品でした(トンデモジャパンな場面もあるし)。
(文/シングウヤスアキ)