プロレス同様、モンスター・パニックの定番テンプレが70年代に完成されていたことが判るZ級珍作『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』
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『キングスパイダー』『尻怪獣アスラ』と来たら、低予算モンスターパニックコメディの金字塔を、ということで今回のお題は『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(1978)。
謎の殺人トマトの脅威と、その脅威を利用しアメリカを我が物にしようとする人物の暗躍まで盛り込んじゃったサスペンスフル突然変異系モンスターパニックモノでございます。
まともな映画好きなら眉をひそめてツバを吐きつける汚物と評される一方、好事家には突き抜けた作風が愛され、本作含め実写4作(2作目にはジョージ・クルーニー出演)、アニメ・ゲームまで拡大。今現在も公式サイトが運営される程の市民権を得ているそうな。
微妙に売れた中堅レスラーもマニア人気に支えられることが多く、怪しげな公式サイトがあったりする辺りも何やら近しきものを感じます。
題名通り、殺人トマトの(チープな)荒ぶり模様とそれに対する人間側が(ベタ過ぎてシュール寄りな)すったもんだする内容ですが、本作のカルト人気の理由のひとつとされるのが勢い任せのミュージカル要素。
パニック封じの情報操作を担当することになった広告エージェント「マインドメーカー」(禿げオヤジ)が、ミュージカル調に歌い上げながら作戦案を披露する謎展開からが本作の本領発揮。他にも軍人ラインダンス、主要キャストの愛のさえずり的なシーンもあります。
ただ、ミュージカル要素を抜いてしまえば、実はパニックモノのテンプレ通りだったりします。特徴的なのが、物語の真相(解決)に近づく茶番劇を挟むように、殺人トマトが怪音を発しながら人々を襲うシーンが展開されること。
また、ミニチュア感を隠す気ゼロの爆破シーンに、巨大トマトを闇雲に撃ちまくる無能な軍人、演技力皆無のモブ脇役といった辺りも然り。 後のジェフ・リロイ作品や『アスラ』でも見られたテンプレが70年代の時点ですでに固まっていることに、このジャンルの停滞感...いや、完成度の高さに驚かされます。
プロレスも多くのギミックの核となるテンプレ的要素は70年代から80年代に掛けてほとんど完成しているともいわれるため(最近ネタにしたパワー型のロード・ウォリアーズ、騙し討ちとズル勝ち系のリック・フレアーなど)、不思議な共通性を見出だせました。
途中まではワハハウフフと笑っていられたものの、後半以降のグダグダ感によって軽い不感症に陥る本作。ですが、テーマ曲を始めとする勇ましくも脳天気なBGMが何故か癖になるので、珍作は一見(一聴)に如かずの精神で手にとってみてはいかがでしょうか、と投げっぱなしでさようなら!
(文/シングウヤスアキ)