植物園のあり方を変えた「指定管理者制度」とは


■法改正を契機に植物園に変化が

なじみ深い施設でありながら、少し地味な印象もある植物園。何かのきっかけがないと、なかなか足を運ばないかもしれません。しかし植物園、特に公立植物園は大きく変化しつつあり、注目すべき施設なのです。
今回、植物園の「現在」をご紹介するにあたって、最初は公益財団法人宇治市公園公社顧問の本間和枝さんにお話を伺いました。本間さんは宇治市植物公園の元園長で、ここ10年ほどの植物園に関しての変化を肌で感じてきた人です。
「現在、多くの植物園が、さまざまな問題と対峙し、それをよりよい形で実現すべく努力をしています。そのきっかけの一つになったのは、2003年に公布、施行された地方自治法の改正による指定管理者制度だといえます。より効率的な運営と市民サービスの向上を目的とした法改正で、これによって多くの植物園は新しい取り組み方を考え、実行する必要性にかられました」
なぜ指定管理者制度が、植物園に影響を及ぼしたのでしょうか。次にそのあたりに少し触れてみましょう。

■指定管理者制度とはどういうものなのか

指定管理者制度とは、簡単にいうと公の施設の管理ができる団体を増やすという趣旨のものです。それまでは、公の施設を運営するのは地方公共団体(地方自治体)か、そこが出資している法人などとされていました。つまり県や市などの直営か、委託を受けた外郭団体が運営していましたが、改正後は地方公共団体が指定すれば民間の団体も管理ができるようになりました。この新しい管理者が指定管理者です。
民間の活力を利用することで、利用者に対する質の高いサービスの提供や経費削減などが、この法改正で期待されました。同時に指定管理者になるために競争性が生じ、入園者の増加や経費の節減などの取り組みを数字で出し、いかに植物園が多く利用されているかをアピールする必要も出てきました。
また、指定管理者が公募で決定することとなればさまざまな団体が参画し、公共の植物園管理の経験が浅いところが指定管理者となることもありえます。そうすると、それまで蓄積されてきたその地域やその園ならではの植物に対する知識や、栽培技術などの継承が困難になる場合も生じます。
さらに、そもそも植物は年単位で、樹木であれば数十年単位で計画し、長期管理をしなくてはならないという側面もあります。再指定までの3〜5年間(施行当時)では、結果が出ないこともありうるのです。
前出の本間さんが所属していた宇治市植物公園では、制度導入後も引き続き指定管理者となるために、クリスマスや蛍、枝垂れ桜の期間に合わせた「ナイター開園」や季節ごとのイベントを開催し、広報活動にも力を注ぎました。通常の植物管理や展示会、講習会なども行いつつ実績を積み続けた結果、入場者数は増え、引き続き指定管理者となることができました。
「指定管理者になるまでの取り組みは本当に大変でした。現在私は園長の職を退きましたが、今も職員たちはその大変さの真っただ中にいるといえます。人的資産が次第に疲弊していくという環境の中で、頑張っています」(本間さん)
取材・文/渡辺ロイ
■『NHK趣味の園芸』2017年10月号より

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