「土も年をとる」って本当?

カルシウムとマグネシウムの両方が補給できる苦土石灰(苦土カル)。撮影:大泉省吾
「土も年をとる」と言いますが、これは本当なのでしょうか。東京農業大学名誉教授の後藤逸男さんに伺いました。

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本当です。人が年をとると、骨からカルシウムが減って骨粗しょう症になります。土も同じで、同じ畑で長年、野菜を作っていると土中からカルシウムが減って土が酸性になります。野菜が根からカルシウムを吸収することも原因の一つですが、張本人は雨です。土中にしみ込んだ雨がカルシウムを溶かし、下層に流してしまうのです。カルシウムはアルカリ性を示すため、土の中からカルシウムが減ると土が酸性になります。この現象が「土の骨粗しょう症」というべき老化、すなわち土の酸性化です。
日本のように雨が多い地域の畑では、チッ素肥料を過剰に施用すると、さらに老化(酸性化)が促進されてしまいます。
野菜を作るには肥料、特にチッ素肥料が欠かせませんが、必要以上に施用すると、収穫後にチッ素肥料が土中に残ります。チッ素(硝酸イオン)は水に溶けやすいので、雨が降ると下層に流れます。その際に、土の中のカルシウムを道連れにするのです。
土の酸性化による老化を防ぐ一番のアンチエイジング(若返り)対策は、少なくなったカルシウムを補うことですが、肥料の適正施用も大切です。なお、カルシウムのほかにマグネシウムも減るので、それらの補給資材として、一般的には苦土石灰を使います。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2017年3月号より

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