真面目モードの橋本崇載八段、三浦弘行九段の得意戦型で真っ向勝負

左/橋本崇載八段、右/三浦弘行九段 撮影:河井邦彦
橋本崇載(はしもと・たかのり)八段(先手)と三浦弘行(みうら・ひろゆき)九段の対局となった第66回 NHK杯戦 2回戦第12局。内田晶さんの観戦記から序盤の展開を紹介する。
※本局は9月19日に行われました。


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■真面目モードの怖さ

ここ数年は戦前のユニークインタビューが注目されている橋本だが、今期はだいぶおとなしい。本局では「朝、起きたときから目の調子が悪くて、あまり見えていない」と発言して周囲を心配させたのも、つかの間。「指し手も見えていなくて」と少しだけおどけて見せたが、ハッシーファンとしては物足りなかったことだろう。
しかし、真面目モードのときの橋本ほど、怖いものはない。筆者はこれまでそんな状況を何度も見てきた。選んだ戦型も三浦の十八番とは、実に面白い。


■意外な戦型選択

横歩取りの進行を見た解説の飯島栄治七段は苦笑いを浮かべた。なぜなら橋本の振り飛車を予想したからだ。飯島七段は「ここ数年は独自で開発した作戦を構築していた橋本八段ですが、最近は最新形を指すスタイルに変えたようですね」と番組収録が終わったあともしきりに驚いていた。
橋本が横歩取り8五飛戦法を選んだのは、三浦も予想外だった。しかし、橋本はスタイルを変えたのではなかったのである。NHK杯戦ならではの戦い方があると考えての策略だったのだ。


■非常識の順に誘う

この戦型におけるプロの常識がある。後手が7筋の歩を無条件で交換できれば作戦勝ちになるという点だ。したがって、△7五歩に先手は▲同歩と応じることが極めて少ない。
橋本はあえて▲7五同歩とし、角交換から▲2四飛(4図)に期待した。▲8四飛から飛車を成り込む狙い。実現すれば先手がよくなる。だが、橋本は「先手の▲7五同歩が珍しい手で、実戦例もほとんどない。三浦さんをもってしても短時間で対応するのは難しいと見ていたんですが…」と実に歯切れが悪い。
  

※投了までの記譜と観戦図はテキストに掲載しています。
■『NHK将棋講座』2017年1月号より

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