ロメインレタスのような新種のハクサイ「タイニーシュシュ」

約10年の開発期間を経て、2010年冬に発表・発売された。ロメインレタスのような形と、生食できるみずみずしさと食感のよさが魅力。耐暑性に優れ、タネまき適期は4〜9月と長い。べと病や軟腐(なんぷ)病に強く、高温期でも旺盛に育つ。写真提供/サカタのタネ
長い年月をかけて生み出される野菜の品種。そんな品種の生みの親である野菜のブリーダーに、イチオシの品種と、プロならではのおいしい育て方を教えてもらいます。12月号で取り上げるのはミニハクサイ「ゆめいろハクサイ タイニーシュシュ」(サカタのタネ)です。

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■この品種名は、何語ですか

英語とフランス語を組み合わせた造語です。タイニーは英語で「小さい」、シュシュはフランス語の子ども言葉で「お気に入り」という意味です。フランス語で、ハクサイを「シュー・シノワ(中国キャベツ)」と呼ぶことにもかけています。ただ、それだけでは何の野菜なのかわからないので、これまでにない新しいハクサイという意味を込めて「ゆめいろハクサイ」という言葉をつけ加え、品種名にしました。

■どのような点が新しいのですか

1つ目は、春まき初夏どりできる耐暑性です。ハクサイは一般的に冷涼な気候を好み、暑いとうまく育ちません。秋冬野菜の代表的存在で、漬物や鍋料理に利用するイメージが強いと思いますが、「タイニーシュシュ」は4月にタネをまいて、5〜6月に収穫できます。
2つ目は、食感と幅広い食べ方ができる点です。一般的なハクサイの葉の裏には「毛(もう)じ」と呼ばれる毛が生えていますが、「タイニーシュシュ」にはこれがありません。そのため食感がよくてみずみずしく、ロメインレタス(コスレタス)と同じように、サラダやサンドイッチなどにして生で食べるのもおすすめです。漬物や鍋料理にとどまらない、幅広い調理特性が魅力になっています。
3つ目は、さまざまなサイズで収穫できることです。株間(かぶま)と列間(れっかん)を調整することで、250g〜1.2kgまで好みのサイズで収穫できます。
これらのことから、「冬の野菜」「漬物と鍋料理が定番」「ドーンと大きい」というハクサイの従来のイメージを覆す品種だと思っています。

■育種(いくしゅ)で苦労した点は?

暑さに弱いハクサイに耐暑性をつけることと、歯触りをよくするために、ハクサイには必ずあるといっていい毛じをなくすことに苦労しました。
じつは、「タイニーシュシュ」を開発するにあたって意識したのがミズナです。ミズナは、もともとは重さ3〜4kgとハクサイ以上のサイズになり、漬物や鍋料理に利用されてきた野菜ですが、密植栽培で収穫サイズを小さくし、サラダ野菜として提案することで消費が広がりました。同じように、サラダで食べられるハクサイを作れないかと考えたんです。市場関係者から、「ミズナのように新しいカテゴリーができるような新品種がほしい」と言われたことも、きっかけの一つでした。

■農家さんなどからの反応は?

丈夫で育てやすく、栽培期間が短いので作付けローテーションに組み込みやすいと好評です。みずみずしくてロメインレタスのように生食できるうえ、葉がしっかりしているので日もちする、使い勝手がいいなどの評価もいただいています。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』2016年12月号より

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