緊張感とスリルが味わえる横歩取り

撮影:藤田浩司
4月からお届けしてきた「村山慈明の知って得する序盤術」も、9月号で最終回となりました。最終月は大駒が派手に飛び交う「横歩取り」を解説します。本稿では、講師の村山慈明(むらやま・やすあき)NHK杯に、横歩取りにまつわる思い出を伺いました。

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■スピード感が魅力 苦い思い出も

私が小学生のころ、通っていた道場で横歩取りが流行して、子ども同士でよく指していました。子どもは展開が遅いと退屈してしまうもの。横歩取りはすぐに激しい戦いになるから面白いんですね。苦い思い出もあります。大人の方と横歩取りを指して、△4五角戦法をやられたときは驚きました。当然、定跡を知りませんから、途中で変な手を指してしまってボロボロに。「こういう将棋も知らないとダメなんだ」と痛感して、定跡書で勉強したことが記憶に残っています。

■怖いもの知らずから「怖い戦型」へ

自慢になりますが、私は棋士になってから数年間、横歩を取って負けなしでした。おそらく「怖い」という意識がなかったからだと思います。ちなみに連勝は12まで伸びたのですが、これを止められた相手は松尾歩八段。ご存じ、横歩取りのエキスパートです。
いまはというと、怖い戦型だと思います。プロでも横歩取りは怖い! 事前研究のウエイトが大きく、レールに乗せられてしまうと、力を出す場面がないまま終局することも多いですから。とにかく若い人の研究量はすさまじい。私は基本的に先手で横歩を取る立場ですが、置いていかれないようにするだけで必死です。

■講座を終えて

この講座を担当するにあたって、改めて昔の将棋やいろいろな形を調べたのですが、その過程で思わぬ発見がいくつもありました。勉強に終わりはないのだと、しみじみ感じます。
この講座が皆さんの上達の助けや、いろいろな戦型に興味を持っていただくきっかけになったのであれば、講師としてこれ以上の喜びはありません。
■『NHK将棋講座』2016年9月号より

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