夫婦で連続勝利なるか──ママ棋士・鈴木歩六段と出場棋士中最年長・淡路修三九段の戦い

第64回NHK杯1回戦 第6局は淡路修三(あわじ・しゅうぞう)九段(黒)と鈴木 歩(すずき・あゆみ)七段(白)の対局だった。内藤由起子さんの観戦記から、序盤の展開を紹介する。

* * *


■読み比べの激しい戦い

鈴木歩七段は年初、七段に昇段した。六段から賞金ランキングで昇段できるのは、一人だけ。鈴木は男性棋士を含め、六段の中でトップの成績だったのだ。昨年は棋聖戦のCリーグにも入るなど、活躍も目覚ましい。
控え室で、解説の山下敬吾九段が、「お子さんはおいくつ?」と聞くと、「もうすぐ2歳です」とにっこり。
夫の林漢傑七段とともにNHK杯夫婦出場を果たした。前の週、1回戦第5局で林七段が勝っている。夫婦で連続勝利となるだろうか。
66歳の淡路修三九段は出場棋士中、最年長とはいえ、「碁が大変に若々しい。読みは若いほうが得意のはずなのですが」と山下九段は評価する。
鈴木も子どものころから詰碁が大好き。棋士の中でも読みに定評がある。本局は山下九段が予想するとおり、激しい戦いから読み比べになった。

■アルファ碁にならう

3月9日から15日まで、人工知能「アルファ碁」とイ・セドル九段(韓国)の五番勝負が行われた。
「アルファ碁」は、イ九段に3連勝で勝ち越しを決め、5局を打って4勝1敗とした。
碁界はこの話題一色というほど盛り上がった。アルファ碁はこれまでの常識にない手を打ち、囲碁の奥深さを再認識させてくれた。
左上、黒5のカカリからよくある定石が進行している。
白12のあと、左辺にヒラかずに淡路修三九段は手を抜いた。
「アルファ碁が試みた手法ですね」と山下敬吾九段。
鈴木歩七段はすぐ白14とツメる。ここで淡路は悩んだ。
「黒15は要らなかったかな。打たないと1図の白2への対処が分からなかった」と言う。
局後、黒3から9で黒がやれると検討された。
白16から下辺で戦いが始まった。黒25に白26とノゾいたのが強手で、黒37までいいワカレになった。
白は38と右下を荒らしたかと思うと、さらに白46と右上にも向かう。黒49は先手を取る工夫だ。2図の黒1などと平凡に打っていると、白が先手となり白10などに回られてしまう。
※投了までの記譜と観戦記はテキストに掲載しています。
■『NHK囲碁講座』2016年7月号より

NHKテキストVIEW

NHKテキスト 囲碁講座 2016年 07 月号 [雑誌]
『NHKテキスト 囲碁講座 2016年 07 月号 [雑誌]』
NHK出版 / 545円(税込)
>> Amazon.co.jp

« 前のページ |

BOOK STANDプレミアム