矢倉には将棋の醍醐味が詰まっている

撮影:藤田浩司
『NHK 将棋講座』では、村山慈明(むらやま・やすあき)七段が講師を務める「村山慈明の知って得する序盤術」が好評連載中です。7月からの3か月は、相居飛車の戦いを見ていきます。今月のテーマは矢倉。自身も矢倉党だという村山七段は「矢倉ならではの充実感を味わっていただきたい」」と語ります。

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矢倉は香まで含めてすべての駒が働き、真正面からぶつかる攻めと受け、手に汗握る攻め合い、入玉をめぐる攻防など、将棋の醍醐味をたっぷりと味わえる戦型です。私自身、矢倉を指しているときは充実感、満足感があります。この講座で皆さんが矢倉を始めて、そうした感動を共有できれば、これにまさる喜びはありません。

■子どものころから矢倉党

私は祖父に将棋を教わったのですが、祖父が居飛車党だった影響で私も自然に居飛車党になりました。私が子どものころは矢倉が盛んな時期で、NHK杯戦や新聞の観戦記ではよく矢倉を目にしたものです。そうした影響もあってか、子どものころから矢倉党でした。

■矢倉漬けだった奨励会級位者時代

いちばん矢倉を指していたのは奨励会のころでしょうか。級位者のときは先手でも後手でも、とにかく矢倉。棋界は4六銀・3七桂型の全盛期でした。奨励会では渡辺明竜王とも指したことがあり、渡辺1級と村山1級の戦いが矢倉になりました。2人ともまだ中学生なんですが、一人前に羽生善治名人と森内俊之九段の実戦例を踏襲。このときは事前研究が生きて、私が勝ちました。
ちなみに、渡辺二段と村山初段で矢倉を指したこともあったと、当の渡辺さんに言われました。内容は私の頓死負け。私は戦型が矢倉だったことくらいしか覚えていませんでした(笑)。

■歴史のある戦型 総合力が試される

40代〜50代の棋士と矢倉を指すと、不利だと感じることがあります。これは矢倉が昔の定跡に誘導しやすいから。経験で差をつけられてしまうんですね。一方で、力を出しやすいのは矢倉のよさです。角換わりや横歩取りと比べて、研究にはまってもすぐに負けることはありません。私は受けの棋風なので、後手番では矢倉が特に気に入っています。あるとき藤井猛九段に「矢倉と言えば村山だな」ということを(冗談かもしれませんが)言われたときは、うれしかったですね。
■『NHK将棋講座』2016年7月号より

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