久保利明九段、室田伊緒女流二段を語る

『NHK将棋講座』の人気連載「あなたの知っている/知らない○○」。2016年5月号には室田伊緒(むろた・いお)女流二段が登場しています。次号、バトンを渡されるのは、室田女流二段と共に棋士会の副会長を務める久保利明(くぼ・としあき)九段。久保九段が室田女流二段について語りました。

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室田さんは女流棋士になって10年ですか。時がたつのは早いですね。アマチュアのころから、愛知に強い女の子がいるという話は聞いたことがありました。初めて会ったのは彼女が女流棋士になってから、イベントの会場だったと思います。彼女が私のファンだと、神吉先生(宏充七段)によく冷やかされました。
いま、室田さんと一緒に棋士会の副会長を務めています。私は初め、谷川会長(浩司九段) から副会長就任の話をいただいたのですが、ひとりでは難しいとお伝えしました。私は大ざっぱだし、先頭に立つタイプではない。室田さんが私の気づかないところに気づいてくれて、役割分担ができているのかなと思います。棋士会主催のイベント前は、不安なことがあるたびに打ち合わせをしました。メールに絵文字ですか? ふだん、絵文字は使わないんですけど、堅苦しかったら室田さんもしんどいかなと思って、入れてみました。
姉御キャラと思われているみたいですが、後輩と親しくして、面倒見がいいから定着したのではないでしょうか。私は先輩なのでそういったイメージはなく、控えめな方だと思っています。
室田さんは振り飛車党らしい、軽快な将棋を指しますね。振り飛車は重い将棋ではなくてさばいていくので、私とは近いものがあると思っています。
昨年、私はA級順位戦プレーオフで広瀬さん(章人八段)と対局しました。研究手を指されたと思って私が長考した局面があるのですが、室田さんが指した将棋と同じだったのです(女流名人戦、渡部愛女流初段戦)。あとで並べてみたところ、しっかり研究して指していると感じましたね。1図がその局面で、2一竜を1二に引いたところです。室田さんは△9九馬から攻め合って敗れてしまいましたが、研究し直して△8九馬のほうがいいと結論を出していたことも伝え聞きました。そういう経緯もあって、今は私も室田さんの棋譜を見て勉強させてもらっています。序盤から工夫している将棋が多いですね。

普及に力を入れるのも大事ですが、女流棋士として成績も残してほしい。副会長になって成績が落ちたと言われないように、お互いがんばりましょう。
■『NHK将棋講座』2016年5月号より

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