野菜栽培の基本「作型」とは?

ジャガイモの生育適温は15〜20℃(生育限界最低温度は10℃、最高温度は22℃)で、この温度の範囲内で植えつけてから収穫を行う必要がある。そのため、関東地方以西では春作と秋作の2回栽培できるが、北海道では夏作の1回のみとなる。撮影:福田 稔
無農薬、無化学肥料で野菜を育てる有機栽培は、よく「難しそう」と言われます。でも、基本さえ理解すれば難しくありません。『NHK趣味の園芸 やさいの時間』では、明治大学特任教授の佐倉朗夫(さくら・あきお)さんが、菜園ビギナーでも始められる、有機栽培のポイントを紹介しています。今月は、栽培の基本「作型(さくがた)」について教えてもらいました。

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「作型」は、野菜を育てるうえで最も基本的かつ重要な考え方で、(1)栽培環境、(2)品種、(3)栽培管理技術の3つの要素によって成り立っています。
たとえば、野菜には「在来種」「地方品種」と呼ばれ、その地域で古くから作り続けられてきた品種があります。これらは、その地域の気候や土地の条件に適応したものが多く、その地域では品質がよく、生産性も高い優れた品種となっています。その多くは、長年の栽培による採種(さいしゅ)の繰り返しによって育成され、その地域で編み出された栽培管理技術と結びついて伝承されてきました。
その地域での適温、適土など気候風土や季節性に関する「栽培環境」、その土地に適応する「品種」、水やりや施肥(せひ)、暑さ・寒さ対策、病害虫防除といった「栽培管理技術」の3つの要素が一体となって、一つの栽培の型になっています。このように、はっきりと認識できる栽培のパターンを「作型」と言います。栽培期間中の気候や、栽培地の土壌に適した作り方のことです。
現在では、多くの野菜が一年中栽培できるようになっていますが、これは、タネまきや植えつけの時期を少しずつずらせばできる、という単純なことではありません。
まず、季節によって変化する栽培環境を考慮して品種を選びます。その際には早晩性、耐暑性や耐寒性、花芽分化(かがぶんか/花芽ができること)に影響する気温や日の長さなどを重視します。そのうえで、栽培環境と、品種に適した管理技術を工夫する必要があります。
野菜を育てるということは、その野菜を取り巻く環境を演出していくことでもあります。その演出に必要な舞台が土で、脚本を「作型」にたとえることができます。ただし、主役はあくまでも野菜。残念ながら、人間は直接演じることはできないのです。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』連載「やってみよう!有機栽培」2016年1月号より

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