プロレベルの対局も──熱戦が繰り広げられた少年少女囲碁大会
- 撮影・小松士郎
8月4日、5日の2日間にわたり、第36回文部科学大臣杯 少年少女囲碁大会全国大会が行われた。数多くの棋士を輩出してきたこの大会だが、ここ数年さらにレベルが上がってきている。全国各地で行われた予選を突破してきた小中学生200人の中から、勝ち抜いたのは…?
* * *
第1回大会の入賞者8名中6名が棋士になるなど、棋士になるための登竜門として、毎年熱い戦いが繰り広げられてきたこの「少年少女囲碁大会」。
今回のテレビ解説を務めた宮崎龍太郎七段は第4回大会で優勝しており、当時のことは鮮明に覚えているというが、それも30年以上前のことだ。その宮崎七段が「全体的にレベルが非常に高いですね。特に中学生の碁はプロレベルと言える内容です」と驚くほど、選手たちのレベルは近年かなり上がってきているようだ。
■10年後のトップ棋士同士の戦い?
2日目の決勝トーナメントに進んだ小学生の中には、山下敬吾九段の長男、真輝君の姿も見えた。山下九段は2日間にわたり「どきどきしますね」と我が事以上に緊張した様子で真輝君の奮闘ぶりを見守っていた。8位入賞を果たした真輝君が順位決定戦で戦ったのは、3月に行われた全日本女流アマチュア囲碁選手権大会で7位入賞の大須賀聖良さん。大須賀さんは大澤奈留美四段の姪(めい)にあたる。
10年後のトップ棋士同士の戦いを思い描いてか、多くの観客の皆さんが熱戦を見守っていた。大須賀さんは5位と、女性で唯一入賞を果たした。
■涙をこらえ切れず…
小学生の部で決勝に残ったのは、千葉県代表・千葉大学教育学部附属小学校6年の池田陽輝君と、東京代表・筑波大学附属小学校4年の福岡航太朗君。ともに囲碁教室の洪道場に通うライバル同士だ。道場を主催する洪清泉二段が「二人とも地にカラく、読みもしっかりしていてタイプが似ていますね」と分析するように、決勝戦はお互いに地を取り合う展開に。中盤まで福岡くんが大きくリードしていたが、結果は池田君の逆転勝利に終わった。「最後にミスが出てしまって…」と涙をこらえ切れなかった福岡君だが、その負けん気の強さ、そして碁盤をにらみつける鋭い眼光から、来年も活躍することは間違いないだろう。
中学生の部は、埼玉大学教育学部附属中学校3年生の林朋哉君と、さいたま市立大谷場中学校3年の林隆羽君が勝ち残った。同姓というだけでなく、ともに埼玉県代表で元院生という対決。
黒番で12目半勝ちを収めた朋哉君は「勝った自分がいちばんびっくり」と満面の笑みを浮かべたのとは対照的に、敗れた隆羽君は「序盤からリードしていただけに、この碁は負けたくなかった」と悔しさをにじませた。来年からは高校選手権でしのぎを削ることになるはずだ。
出場した子どもたちの中から第2の山下、井山が現れ、日本囲碁界が中国、韓国に追いつき、追い越す日が今から楽しみでならない。
■『NHK囲碁講座』2015年11月号より
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第1回大会の入賞者8名中6名が棋士になるなど、棋士になるための登竜門として、毎年熱い戦いが繰り広げられてきたこの「少年少女囲碁大会」。
今回のテレビ解説を務めた宮崎龍太郎七段は第4回大会で優勝しており、当時のことは鮮明に覚えているというが、それも30年以上前のことだ。その宮崎七段が「全体的にレベルが非常に高いですね。特に中学生の碁はプロレベルと言える内容です」と驚くほど、選手たちのレベルは近年かなり上がってきているようだ。
■10年後のトップ棋士同士の戦い?
2日目の決勝トーナメントに進んだ小学生の中には、山下敬吾九段の長男、真輝君の姿も見えた。山下九段は2日間にわたり「どきどきしますね」と我が事以上に緊張した様子で真輝君の奮闘ぶりを見守っていた。8位入賞を果たした真輝君が順位決定戦で戦ったのは、3月に行われた全日本女流アマチュア囲碁選手権大会で7位入賞の大須賀聖良さん。大須賀さんは大澤奈留美四段の姪(めい)にあたる。
10年後のトップ棋士同士の戦いを思い描いてか、多くの観客の皆さんが熱戦を見守っていた。大須賀さんは5位と、女性で唯一入賞を果たした。
■涙をこらえ切れず…
小学生の部で決勝に残ったのは、千葉県代表・千葉大学教育学部附属小学校6年の池田陽輝君と、東京代表・筑波大学附属小学校4年の福岡航太朗君。ともに囲碁教室の洪道場に通うライバル同士だ。道場を主催する洪清泉二段が「二人とも地にカラく、読みもしっかりしていてタイプが似ていますね」と分析するように、決勝戦はお互いに地を取り合う展開に。中盤まで福岡くんが大きくリードしていたが、結果は池田君の逆転勝利に終わった。「最後にミスが出てしまって…」と涙をこらえ切れなかった福岡君だが、その負けん気の強さ、そして碁盤をにらみつける鋭い眼光から、来年も活躍することは間違いないだろう。
中学生の部は、埼玉大学教育学部附属中学校3年生の林朋哉君と、さいたま市立大谷場中学校3年の林隆羽君が勝ち残った。同姓というだけでなく、ともに埼玉県代表で元院生という対決。
黒番で12目半勝ちを収めた朋哉君は「勝った自分がいちばんびっくり」と満面の笑みを浮かべたのとは対照的に、敗れた隆羽君は「序盤からリードしていただけに、この碁は負けたくなかった」と悔しさをにじませた。来年からは高校選手権でしのぎを削ることになるはずだ。
出場した子どもたちの中から第2の山下、井山が現れ、日本囲碁界が中国、韓国に追いつき、追い越す日が今から楽しみでならない。
■『NHK囲碁講座』2015年11月号より
- 『NHK 囲碁講座 2015年 11 月号 [雑誌]』
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