羽根直樹九段 囲碁人生のルーツ

撮影:小松士郎
「中京のダイヤモンド」と呼ばれた羽根泰正(はね・やすまさ)九段(元王座)を父に持ち、14歳でのデビュー時から中部碁界の期待を一身に背負ってきた羽根直樹(はね・なおき)九段。棋聖、本因坊、天元、碁聖など数々のタイトルを獲得し、日本棋院中部総本部の顔として現在も活躍を続けているそのルーツとは?

■碁が生活そのもの

私の家族は母や兄も含めて皆、碁を打ちますので、碁があるのが当たり前という環境でした。ですから小さいころから碁石で遊んでいて、2歳か3歳のころには、一応碁らしきものが打てるようになっていました。3歳のときには、地元の大会に出ていたそうですから。
幼少時に父から指導を受けたことはありません。自分で子供に教えると、どうしても厳しくなってしまうからだそうです。その代わりに父は、環境を整えてくれました。ここへ習いに行きなさいとか、この教材をやりなさいとか。どういう勉強をすればいいかという道筋をつけてくれまして、直接教えてもらうようになったのはもう入段が近くなってからです。それまではポツポツと打ってくれる程度でした。
近所に強いアマチュアの方がおられて、子供を教えることもされていたので、小学校が終わったらそこへ行って教えてもらう。そして夕方になったら家へ帰る──これが毎日の日課となっていて、日曜日には碁会所へ通うという生活を送っていました。
さかのぼって幼少期には、父が定石カードなるものを作ってくれまして、徐々に定石を学んでいける工夫を凝らしてくれたものです。その他にもいろいろな教材を用意してくれましたが、兄がまずその教材で勉強して、そのあとを私が追いかけていく流れでした。
小学校1年生の夏に院生になり、入段が決まったのが中学校2年生の秋でしたから、7年かかったことになります。
私の場合、父が棋士だということもあるのかもしれないですけど、碁が完全に生活の一部というか、生活そのものになっていたので「プロになるため土日の院生手合を頑張る」という感覚はありませんでした。いつもどおりの日常を送って碁を打っていたら、自然とプロになったという感覚でしょうか。
入段が決まったとき、父が特に何かを言ってくれた記憶はありません。「しっかりやれよ」くらいは言ってくれたのかもしれませんが、恐らく父としても、ようやく出発点くらいの気持ちだったのだと思います。
■『NHK囲碁講座』2015年6月号より

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