「国宝指定」は取り消されるのか

国宝指定されている作品は、2015年4月現在1093件。一度国宝として指定されれば永遠にその座は安泰かと思いきや、指定が取り消されることもあるという。日本美術を主な領域とするライター、エディターの橋本麻里 (はしもと・まり)さんに聞いた。

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一度国宝に指定されたら、あとは永久にその状態が変わることがないのか、といったらそうではない。国宝たる条件を失えば、指定が取り消されることもある。昭和24年(1949)1月、法隆寺(ほうりゅうじ)の金堂(こんどう)から火の手が上がり、7世紀の仏教壁画12面とともに一夜にして焼け落ちる火災が発生。第二次世界大戦中の空襲による被害を免れた法隆寺での火災という前代未聞の事件は国外でも大きく報道され、「文化財保護法」制定の契機となった。その施行直前だった昭和25年(1950)7月、新しい法の下で国宝指定を受けたばかりの京都・鹿苑寺金閣(ろくおんじきんかく)が放火によって炎上、焼失する。法隆寺火災の反省から制定された法律の施行直前の不祥事に、文部省(当時)は出鼻をくじかれ、社会も大きな衝撃を受けた。新法では建物が全焼した場合、建造物の国宝指定は取り消されると決められていたため、金閣の指定も消えた。その後再建された新生金閣は指定の対象とはならず、現在では東山の慈照寺銀閣(じしょうじぎんかく)のみ、国宝となっているのである。
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