森内俊之九段、「いろいろあった」今期大会を制し13年ぶりのNHK杯優勝

左/行方尚史八段 右/森内俊之九段 写真:河井邦彦
シード棋士が2回戦で次々に敗れ、ベスト8に20代棋士が3名残るなど波乱の展開となった第64回NHK杯テレビ将棋トーナメント。その締めくくりとなる決勝戦が、3月22日(日)に放送された。
決勝のカードは、A級順位戦最終局でも相まみえた森内俊之(もりうち・としゆき)九段と行方尚史(なめかた・ひさし)八段。準決勝の森内―深浦康市九段戦の最終盤で見せた、森内のギリギリのしのぎ。また、行方―橋本崇載八段戦の衝撃の決着は記憶に新しいところだが、決勝という大舞台にふさわしい重量級の組み合わせとなった。高野悟志記者が、『NHK将棋講座』2015年5月号に観戦記を寄せている。

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■初優勝を目指して

「今期はいろいろあったね」と関係者は皆、口にした。250手を超える持将棋の死闘、準決勝という大舞台で反則の決着。例年以上に話題の多かったNHK杯も、いよいよ決勝を迎えた。15年ぶりの持将棋、9年ぶりの反則、ともに行方の対局で起こった出来事である。何だかドラマを感じる勝ち上がりだ。
決勝進出は初。18回目の出場で初優勝を目指す。
振り駒の結果、行方先手で対局開始。戦型は角換わり腰掛け銀になった。

■厳しい一年

森内にとって、今期は厳しい一年だった。名人と竜王を立て続けに失い、勝率も5割を切っている。そんななか、NHK杯では持ち前の粘り強い将棋が目立った。羽生善治名人との3回戦は力強い玉さばきから快勝。準決勝の深浦康市九段戦は終盤、ぎりぎりの受けで相手の攻撃をしのいでいる。
すごい速さで指し手は進む。森内は実戦経験のある局面を目指していた。そして、行方もその将棋になる可能性は大いに感じていた。
※振り駒で行方先手となった対局は、互いに得意とする正調角換わり腰掛け銀のねじり合いに進行。詳しい内容はテキスト68ページからの観戦記でお伝えしています。
■『NHK将棋講座』2015年5月号より

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