冬にうれしい食材キムチ ― そのおいしさと栄養の秘密

撮影:吉田篤史
朝鮮半島で親しまれてきた漬物・キムチ。辛みと酸味がきいた独特の味わいは今や日本の家庭でもすっかりおなじみ。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科准教授の前橋健二(まえはし・けんじ)さんが、そのおいしさと栄養の秘密に迫ります。

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焼き肉や鍋に、ご飯の供にと、食卓に上る機会も多いキムチ。冬の寒さが厳しい朝鮮半島では、昔から初冬に白菜のキムチをまとめてたくさん漬け、新鮮な野菜が不足しがちな冬の間の保存食として食べる習慣がありました。
白菜キムチの一般的なつくり方は、たっぷりの白菜を塩漬けにしたあと、一度水で洗って塩けを抜き、いかやアミなどの塩辛、かゆや米のとぎ汁、果物、とうがらし、にんにくやしょうがなどの香味野菜を混ぜたヤンニョム(合わせ調味料)をぬり込んで漬けるというものです。漬けるうちに、白菜の表面などに付着していた乳酸菌によって発酵が進み、雑菌の増殖を防いで保存性が高まるとともに、独特の香りや酸味、うまみが生まれます。
6月号の「ぬか漬け」の回でも取り上げましたが、キムチの発酵にかかわる植物性の乳酸菌は過酷な環境に強いのが特長。健康面では、腸内環境を整える、アレルギー症状を改善する、免疫力をアップするなどの作用が期待できます。また、乳酸菌が活動する過程で皮膚などの働きを整えるビタミンB群の量がアップ。同様に、鎮静効果や血圧降下、中性脂肪のコントロール、脳の血流改善などの作用で注目されるアミノ酸の一種・GABA(ギャバ)なども増えることが分かっています。
また、白菜自体がもつビタミン類や食物繊維だけでなく、ヤンニョムの各種食材に含まれる豊富な栄養分をバランスよくとれるのもキムチの魅力。さらに、赤とうがらしやにんにく、しょうがには体を温める作用もあり、冬の寒い時季にうれしい食材といえます。
■『NHKきょうの料理』2015年1月号より

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