つんく♂を支えた、家族の愛とは?

「だから、生きる。」
『「だから、生きる。」』
つんく♂
新潮社
1,404円(税込)
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「歌手である僕が、声を失う――。
 こんなこと、デビューした頃には、夢にも思わなかった」

 突出したリズム感から生み出されるグルーヴと、予想外の展開をみせるメロディー、女子小・中学生から大人の女性まで、繊細に揺れ動く女心を描いた歌詞。シャ乱Qとして、そしてハロー!プロジェクトの生みの親として、現在までに1500曲を超える楽曲を手掛けてきた、つんく♂さん。

 2015年4月4日、近畿大学入学式での祝辞にて、喉頭癌により喉頭全摘手術を受けたことを公表したつんく♂さんですが、そのとき舞台袖では、奥さんと、もうすぐ7歳になる双子の長男と長女、4歳になったばかりの次女が見守っていたのだといいます。

 声を失ったつんく♂さんが、新入生たちに、家族に、そしてこれからの自分自身に伝えたかったメッセージ。本書『だから、生きる。』では、デビューから現在までの日々――音楽、癌、そして家族と向き合ってきた、辛いことがありながらも愛に救われる日々――を赤裸々に綴ることにより、祝辞の言葉が生まれるまでに辿ってきた、その道のりが明らかになっていきます。

 2014年10月5日に行われた、モーニング娘。'14のニューヨーク公演。このとき、つんく♂さんの喉は、放射線治療で治りきらなかった癌が肥大化、飛行機に乗り長時間気圧の変化の影響を受けることで、窒息死してしまう可能性があるほどまでに悪化していたのだといいます。

 そうした状態にも関わらず、家族とともに、命懸けの覚悟をもって彼女たちの公演を見届けた、つんく♂さん。翌日、ニューヨークから成田への飛行機のなか、自問自答を繰り返しながら「歌手・つんく♂」に別れを告げたといいます。

「頭では分かっていても、そんな馬鹿な、そんなことが僕に起こるはずがないと、心がそれを否定する。
 でも、いくら否定したところで、現実が変わらないことも分かっていた。
 歌手として一番大事にしてきた声を手放す。
 そして、僕は、生きる道を選ぶ」

 息苦しさのあまり、成田に到着するや否や病院に直行、気管を切開することに。気管を切開すれば、声を失ってしまうことになるため、呼吸もままならない状態のなか、三人の子どもたちに向け、それが最後となる自身の声でメッセージを伝えたといいます。そして、「その後、妻にもいくつかのメッセージを伝えて、最後に、いろんな口調で、妻の名前を何度も呼んだ」のだそうです。

 癌との過酷な闘いの日々と同時に、本書から終始伝わってくるのは、熱い家族の愛。声を失ったいま、つんく♂さんは何を考えるのか、溢れんばかりの思いの詰まった一冊となっています。

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