「質の高いものなら売れる」は幻想? クールジャパン戦略の落とし穴とは
- 『クールジャパンとは何か? (携書127)』
- 太田伸之
- ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 1,080円(税込)
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近年頻繁に耳にする、「クールジャパン」という単語。官民一体となり、日本の優れた「メディア・コンテンツ」「食・サービス」「ファッション・ライフスタイル」を世界にアピールしていこうとする動きですが、では実際、具体的にどのようにアピールしていけば良いのでしょうか。
クールジャパン機構の代表取締役社長であり、『クールジャパンとは何か?』の著者である太田伸之さんは、同書のなかで、クールジャパン戦略を推進していくために日本がこれからすべき急務を指摘していきます。
まず太田さんは、これまで日本企業が海外進出していった際において生じた問題点・反省点を、具体例を挙げて指摘。そして今後、そうした反省点を踏まえ、どのように日本の技術や製品を海外にアピールしていくべきなのかを示します。
「いいものをつくるのは当たり前。でも、いいものをつくったから売れるかといえば、もうそれは昔の話、ということです。いいものをつくって、それをどうやって売るかまで考えないと、クールにはなりません。中身をつくるのと同じか、それ以上の情熱を持って、売り方、見せ方を考えなければ生き残れない時代です」(同書より)
たとえば海外にアピールする際、見直すべき点の一つとして注目するのは、パッケージの重要性。海外ではいくら中身が優れていようとも、「パッケージがダサいとすべて台無しになる」のだそうです。
「おいしさだけではなく、見た目のカッコよさも合わせてはじめて『クール』と認めてもらえるのです。これはパッケージのみならず、お店のデザインや商品の並べ方、店頭での接客のしかたなど、トータルな印象によって決まります。そこまでやってはじめてクールになるのです」(同書より)
日本が世界に誇れる技術力の高さや伝統によって生み出される、質の高いモノ。海外進出する際には、それらをただ無造作に売り出すのではなく、デザイナーによって新たにパッケージにも一工夫を加え、「作り手」「売り手」「デザイナー」がチームになることによってはじめて、成功を生み出すことができるのだといいます。
果たしてクールジャパン事業は成功させることが出来るのでしょうか。産業のあり方、ビジネスモデルそのものを見直すべき時が来ているのかもしれません。