参加者27人中22人が脱落、屋久島で行われた100kmウォークの裏話
- 『屋久島発、晴耕雨読』
- 長井 三郎
- 新泉社
- 1,944円(税込)
- >> Amazon.co.jp
- >> HonyaClub.com
- >> エルパカBOOKS
始まったばかりの2015年。年初に今年の目標を掲げた人も多いのではないでしょうか。英会話のGabaが20-59歳のビジネスパーソン1,000人に「2015に目標にしたいこと」を聞いたところ、1位は「貯金」で52.6%、2位は「年収UP」40.8%、3位は「ダイエット」26.7%となりました。目標をたてるには区切りの良い年始、ぜひ、このタイミングで大きな目標を掲げてみてはいかがでしょう。
今回は、書籍『屋久島発、晴耕雨読』より、新春に屋久島を舞台にオリジナルのウォーキング大会を開催した男性のエピソードを紹介します。ウォーキング大会と言ってもそう易しいものではありません。屋久島は"月に35日は雨が降る"と言われている場所で、歩く距離はなんと100km。
大会の発起人は同書の著者でもある、屋久島生まれの長井三郎さん。早稲田大学を卒業後に帰島し、電報配達請負業や屋久島産業文化研究所スタッフ、南日本新聞記者と様々な職業を転々し、現在は民宿「晴耕雨読」を経営しています。
長井さんが、この長距離ウォークに挑戦してみたいと思ったきっかけは、登山家の戸高雅史さんとの出会い。大分県の高校生向けに100kmウォークというプログラムを仕掛けていた戸高さんとの会話から、実際にやることを決めたのだとか。
「100kmというとんでもない距離をただひたすら歩く。その単純な行為の中で、何が見えてくるのだろう? 肉体的、精神的限界の中で、何を思い何を考えるのだろうか? 話を聞いているうちに、歩いてみたいと思った。おあつらえむきに、屋久島一周は約100kmときている。加えて、40代半ばになってアチコチ故障箇所が出はじめた自分に、いったいどれだけの体力や気力が残っているのか、それも確かめたい」(同書より)
そんな気持ちを抱いた長井さんは、ある晩の飲み会の席で友人たちに発案。即座に「やろう! 」ということになったそうです。同書では、「何かを企ててみんなを乗せるには、一席設けてアルコールがある程度沁みこんだところで話を持ち出すに限る」と、無謀な企画を通す時の術をアドバイスしています。
そうやって仲間をその気にさせた長井さんはじめ27人の参加者が、「歩いてみよや! 屋久島一周」として1997年の1月1日午後0時に100kmウォークをスタート。しかし、天候の安定しない屋久島、歩いているうちに、雷鳴がとどろき豪雨に。山道は川のようになり靴の中はびしょ濡れ。夜になると冷気が襲いかかり、その翌日は台風並みの突風が吹き荒れるという状態で大会は進行しました。
そんな悪条件の中、見事に完歩できたのはたったの5人。最も早い到達者のタイムは22時間40分でした。一方、最も遅い33時間46分でゴールした男性は、「もうだめだと何度も思ったけど、それでも成せばなるんですね、いい財産になりました」(同書より)と大会を振り返ります。
全国的には決して有名なイベントではないこの100kmウォーク、その後10年間も続いたそうです。第10回大会は102人の参加者が集い、82人が完歩。また、この10年間、のべ566人が参加し336人が見事に完歩したという島の大イベントへと進化しました。
飲み会の席から始まったこの100kmウォークですが、多くの人にとって特別なイベントとなりました。長井さんのように「やろう!!」という気持ちを尊重することで、得難い経験が可能となるのです。是非、新年の目標設定の際は、少々難しいことでも「やろう!!」と挑戦してみてはいかがでしょうか。