「言葉を忘れても、歌は歌える」 知識人が語る人類の可能性とは
- 『知の逆転 (NHK出版新書 395)』
- ジャレド・ダイアモンド,ノーム・チョムスキー,オリバー・サックス,マービン・ミンスキー,トム・レイトン,ジェームズ・ワトソン
- NHK出版
- 929円(税込)
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7月12日と19日の2回に渡ってNHK「Eテレ」で放送された『世界の叡智(えいち)6人が語る 未来への提言』。18万部を超えるベストセラーとなった新書『知の逆転』は偉大な科学者たちに対する、サイエンスライターの吉成真由美さんによるインタビューで構成されています。
本書および番組に登場した科学者は、ジャレド・ダイアモンド氏(地理学者)、ノーム・チョムスキー氏(言語学者)、オリバー・サックス氏(脳神経科医)、マービン・ミンスキー氏(人工知能学者)、トム・レイトン氏(数学者)、ジェームズ・ワトソン氏(分子生物学者)の6名。それぞれの分野で、従来の通説を「逆転」させて世界を驚かせた面々です。
インタビュアー兼編者の吉成さんは、知識人たちに会い、直接話を聞くことで、核武装、資本主義、インターネット、尊厳死、宗教、いじめといった現代社会が直面する諸問題に対峙。彼らが予見する未来に迫ります。
第三章『柔らかな脳』に登場する脳神経科医のオリバー氏は、ロバート・デ・ニーロ主演で映画化もされた『レナードの朝』の著者。医療の現場で人間や脳の持つ驚くべき力を見てきてきました。
例えば、「聞く」「話す」「読む」「書く」などといった言語表現が、脳への外傷などによって損なわれてしまった失語症の患者たち。障害により、言葉を発する事が困難となってしまった彼らの多くは、言葉を失っても歌を歌うことができるというのです。
「『ハッピーバースデー』とか、本人の誕生日でなくてもかまわず歌いだすと、彼らも一緒にあわせて歌ってくるのです。歌っているうちにメロディーだけでなく言葉が思い出されてきて、たとえ音楽の中にはめ込む形でしか現れてこないとしても、これ自体が脳のどこかに言語がしまいこまれていることを示している」
失語症患者たちが、歌を歌えるという事実。将来的には、患者たちの脳から言語を呼び戻したり、言語野がない右脳でも、言語的な発達を促すことも可能であると、オリバー氏は予測します。
人類が持つ可能性について、改めて考えされてくれる本書。感嘆するような未来図が描かれた、現代人必読の一冊です。