ひらがなが多いのに読みにくい  75歳の芥川賞受賞作『abさんご』が異例のヒット中

abさんご
『abさんご』
黒田 夏子
文藝春秋
1,296円(税込)
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 史上最高齢の75歳で第148回芥川賞を受賞した黒田夏子さんの『abさんご』が異例の大ヒットとなっています。25日の発表では、刊行約1週間で、4刷14万部に達したことがわかりました。近頃の受賞作では、『苦役列車』が刊行から約1か月で7刷19万部、また、昨年の田中慎弥さんの『共喰い』は、刊行から約2週間で6刷20万部の人気作に。『abさんご』は、先の2作同様のヒットの可能性を秘めていると言えるでしょう。品薄状態が続いている書店も多く、まだまだこの人気は続きそうです。

 受賞作『abさんご』は、横書きで平仮名を多用し、固有名詞を一切使用しないという実験的な小説。カギかっこも使用されていません。とにかく斬新な書き方だと言える同作。一度ページを開いてみると、一つひとつの言葉を咀嚼しながら次の言葉を追わないといけないので、必然的に丁寧に読み込むことが求められます。

 筆者の年齢や発行部数はよく注目されますが、その一方、肝心の作品の内容に踏み込んだ情報が少ないのも、同作の特徴ではないでしょうか。それはやはり難しいから? 文藝春秋のサイトでは、「『昭和』の知的な家庭に生まれたひとりの幼子が成長し、両親を見送るまでの美しくしなやかな物語」と紹介されています。

 しかし、独特な書き方故に、読み解くのにいつも以上の時間がかかってしまうことは覚悟しておいた方が良さそうです。また、75歳という年齢にとらわれていると、意外と若くて柔らかい言葉の連続に驚くことになるでしょう。第24回早稲田文学新人賞を受賞した際、選考委員・蓮實重彦氏は、「誰もが親しんでいる書き方とはいくぶん異なっているというだけの理由でこれを読まずにすごせば、人は生きていることの意味の大半を失いかねない」という言葉を残しています。

 同書には、『abさんご』以外にも、「読売短編小説賞」に入選したデビュー作ほか2編も併録。それらは縦書きで、書籍の後ろからめくるようになっていて、いわゆる「リバーシブル本」という形に。書き方だけでなく、書籍自体も斬新な芥川賞受賞作です。

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