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アノヒトの読書遍歴 成山剛さん(sleepy.ab)(後編)

sleepy.成山剛さんの作詞的な黒歴史。発端はゲーテ。

 前編では『深夜特急』で妄想の旅に出ていたこと、ゲーテの詩を読んで上から目線の作詞をしていたことなどを明かしてくださった成山剛さん。続く後編は、2月6日にリリースするニューアルバム『neuron(ニューロン)』にまつわる話から!

「アルバムのテーマを"宇宙"にしようと決めたあと、図書館で宇宙の写真が載っている本をよく眺めていました。そこで見つけたのが、アンドロメダ星雲と脳神経細胞の形状が酷似しているという一説でした。知識というよりも、ロマンを感じて曲のイメージもどんどん膨らんでいきましたね。これをきっかけに、アルバムのテーマも"宇宙"から"脳内宇宙"へとシフトしていったという経緯があるんです」

 それからもう一冊、ニューアルバムをきっかけに読み始めた本があると言う。

「『アンドロメダの守護者』という本なんですが、アルバムの中に『アンドロメダ』という曲もあったりして、なんとなく借りてみたんです、駅で」

 ......駅で? ......借りる?

「最近発見したんですけど、札幌の地下鉄の駅に"メトロ文庫"という本棚があるんです。駅の事務所に読まなくなった本を寄贈して、それを誰でも勝手に借りて行けるというものです。返却期限や貸し出しの手続きもなくて、ほんとに自由に持って行っていい。"メトロ文庫"という名前もいいし、すごく面白いシステムですよね」

 そんなわけで、駅で偶然出合った『アンドロメダの守護者』。札幌から東京への飛行機の中でがっつり読むはず......だったけど。

「SF小説というのを今まであまり読んだことがなくて、入り口でつまづいているところです(汗)。世界観に入り込むのがなかなか難しいものなんですね。まだ5ページしか進んでいません(笑)。あと、借りたから知ったんですがタイトルのところに"宇宙英雄ローダンシリーズ103"と書いてあって......。103から読んでいいものかと、ちょっと感じますね」

 一方、同じ宇宙繋がりのタイトルでも上・下巻を読破済みなのが、重松清の『カシオペアの丘で』。

「子どもの頃、学校で星の観察の宿題が出たことがあって、夜にひとりで外へ出て行ったことがあるんです。子どもでしたから、夜遅くに外へ出かけるということがすごく刺激的で。その時に見た星空と、『カシオペアの丘で』の表紙の絵がリンクして、本屋ではっとしたのが手に取ったきっかけでした。ただ、初めのきっかけとは裏腹に、中はすごく重いテーマでした。死と向き合うことや、許しがテーマになっていて、それらがすごく軽くない感じで描かれている。人間模様がとても丁寧に書かれていて、没頭してしまいました」

 重松氏の小説は他にも何冊か読んでいるというが、読み始めたきっかけはTwitterのつぶやきだったのだとか。

「"sleepy.abを聴きながら、重松さんの小説を読んでいます"と、誰かがTwitterに書いていたのを見たことがあって。その時は重松さんの小説を読んだことがなかったんですが、そのあとも"sleepy.abは重松さんの小説にすごく合うと思います"と言われることが何度かあり、興味を惹かれて読み始めました。実際に読んでみると、描きたいこと、テーマのようなものがリンクする部分があって。読んでいる時のちょっとひりひりした感じとかも。感覚的にはすごく似ているなと思いました」

 ニューアルバム『neuron』も重松小説を読みながら聴いてみたい。そんな気分にさせられた成山さんのお話はここで終わり。

取材・文/根本美保子


(プロフィール)
成山剛(なりやま・つよし)
1977年北海道根室市生まれ。sleepy.abのヴォーカル/ギター。札幌の音楽専門学校を卒業後、1998年にsleepy ab.結成。ニューアルバム『neuron』が2月6日にリリース! また、4月11日の金沢vanvan V4を皮切りに全国ツアー「neuron tour」も開催予定!
http://www.musicaallegra.com/sleepy/

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