小津安二郎作品と『踊る大捜査線』は似ている?

映画道楽 (角川文庫)
『映画道楽 (角川文庫)』
鈴木 敏夫
角川書店(角川グループパブリッシング)
555円(税込)
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 ジブリの大人気作品である『魔女の宅急便』と『おもひでぽろぽろ』のBlu-ray版が12月5日に発売されました。9日に行われた発売記念トークイベントには、シンガー・ソングライターの松任谷由実さんとスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登場。鈴木プロデューサーによれば、ジブリがいま制作中の映画は松任谷さんの名曲「ひこうき雲」のようなイメージなのだそう。松任谷さんは「魔女の宅急便」で挿入歌「ルージュの伝言」、エンディングテーマ「やさしさに包まれたなら」を提供しており、もし「ひこうき雲」も使われれば2度目のタイアップということに。今後どうなるかが気になります。

 11月25日、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、映画について語った書籍『映画道楽』が、文庫に生まれ変わって発売されました。その中で日本映画界の巨匠である小津安二郎監督の作品について「小津の映画はひとつのファンタジー」と評しています。小津監督の作品は、現実よりも日本語のスピードが遅く、リアリズムからはかけ離れているのです。

 「僕の考えでは、リアルな人間自体に観る側の関心が行かないように作品を作っていると思うんです。映画が描こうとしているテーマは毎回、別のところにある。それを分かってもらいたいから、人間を駒のように使う。人間の演技力に力点を置いたら、観客はそっちを観てしまいますからね」(鈴木敏夫プロデューサー)

 そして驚くことに、そういった小津監督の作品は『踊る大捜査線』の演技と似ているところがあり、いまアニメーションを作る現場での状況とも関係があると思っているとのこと。小津作品と『踊る大捜査線』の主人公は"考えてから行動するタイプ"であり、"行動してから考えるタイプ"ではないというのです。これは肉体と頭脳のバランスが偏った「考えてから行動する現代の人たち」とも共通し、ジブリでは行動してから考える若い主人公が登場する、肉体性を謳歌した作品を作っていきたいと考えているようです。

 ジブリの名プロデューサーが映画について様々な角度から語った本書。ジブリファンのみならず、映画ファンの方々も、文字を通して映画の世界にどっぷりつかってみてはいかがでしょうか。

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