東京・六本木で電子書籍イベント―作家・桜庭一樹さんが『伏 贋作・里見八犬伝』を朗読

電子書籍を使った朗読会での桜庭一樹さん

 3月30日、「本好きのための電子書籍のススメ 桜庭一樹さんと電子書籍にチャレンジ!」と題されたイベントが東京・六本木「国際文化会館」で開催された。

 同イベントは毎回ゲストとして招く作家と共に、自身の作品をSONYの電子書籍専用端末「Reader」を使って朗読してもらいながら参加者と作品について語り合う読書会。前回の石田衣良さんに続き第7回目の開催となる今回は、ゲームシナリオライターとしての顔も持つ作家・桜庭一樹さんをお呼びして開催された。

 進行役をつとめる幅允孝さんと共に、盛大な拍手に包まれ登場した桜庭さん。今回は文藝春秋創立90周年記念作品であり、今年秋に劇場用アニメーション映画としても公開が決定している『伏 贋作・里見八犬伝』を課題図書として扱った。桜庭さんは「この作品は編集さんと歌舞伎を見に行った帰りに生まれたもの。芝居調に書き進めていくよう意識したので、これを実際声に出して読むとどうなるのか面白そう」と話し、「伏」という生き物が誕生する冒頭シーンを朗読した。

 朗読の後は、桜庭さんに同作への思いを語っていただくトークセッションへ。「『伏』は実社会に生きる私たちの弱さやずるさをそなえた生き物。もしかしたら自分がその子孫かもしれない。読者の皆さんには、登場人物の浜路(はまじ)が『伏』を狩るためにそれを追い回し続けたように、時を越えて浜路が自分を狩りにくるのではという感覚を感じてもらいたい」と桜庭さん。

 その後、参加者からは桜庭さんが特に気に入っているキャラクターや登場人物の名前の付け方などについて質問が上がり、それに桜庭さんが答えたり、作品や読書会の感想を共有したりした。参加者からは、「頭の中ではべらんめえ口調で物語を読み進めていたので、桜庭さんの静かで落ち着いた朗読を聞くのはとても新鮮だった」という声も。

 また、桜庭さんは電子書籍について「本を読むメディアによって段組みやデザインが変わってしまうことは課題だが、好きな作品を読むことにどんなものを使おうが好きなものは好きと感じるはず。今後、読書という行為にメディアが問われることはなくなっていくのではないか」と話した。

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