インタビュー
映画人の仕事

第8回 特殊メイク・特殊造形アーティスト/百武朋さん【後編】

百武朋さんに聞く、特殊メイク・特殊造形の仕事とその未来!【後編】

 特殊メイク&特殊造形アーティストの百武朋さんに聞く映画の仕事! 後編では、特殊メイク&特殊造形業界事情や、携わった作品の思い出や、などを伺っていきたいと思いますが、まずはこれ、けっこう気になるCGとの共存の話から。


CG時代の特殊メイク&特殊造形のあり方とは?

「突然ですが、機関車トーマスを見て、あれがCGなのか、人形アニメーションなのか、それともパペットなのかってわかります? 僕の子どものお母さん方は違いがわからないって。つまり何が言いたいかというと、僕らの業界では今、CGに移行しようという流れがあるんですが、それって一体誰に向けてやってるんだろうな?って疑問に思ったりするんです。だって一般の人たちには違いがわからないわけだから」

 ちなみに機関車トーマス、今は完全CGで作られていますが、以前はミニチュアを動かすものや、CGのものなど何パターンかあったらしい。でも、CGのメリットって何なのでしょうか。

「CG移行の理由として一番わかりやすいのは、キャラクターをリアルかつ自由に動かせることですかね。例えば昔の映画で『グレムリン』とかは、下の方にコードとかがいっぱい隠れているんですよ。それを使って動かすわけですから、場所の移動は難しい。でもCGなら引きの絵にしてもキャラクターを自由に動かせるメリットはあるのではないでしょうか」

 百武さんも制作にCGを使うことはありますか?

「基本は粘土をいじって造形していますが、CGも少しは入っています。例えば『図書館戦争』の図書マークがそう。あれはCGでデザインして3Dプリンタで出力しています。ただ3Dプリンタって斜めのラインに弱いんです。ギザギザになっちゃう。なので実際には、その部分をやすったりなど微調整を加えたものを型取りしています。実写版の『魔女の宅急便』のカバは、ちょっと違ったプロセスです。手で作ったミニチュアのひな型を3Dでスキャニングして、そのデータを3Dプリンタの担当者に渡して発泡スチロールで出力してもらうというやり方です。これもそのまんまだと発泡スチロールの質感が出てしまうので、2〜3ミリ分ぐらい小さめにデータを作ってもらって、その分の厚みを粘土で盛って彫刻し、型どりします。こんな感じでCGとは繋がりを持っていますね」

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実写版『魔女の宅急便』に登場するカバのひな形


いずれは完全CG時代が到来する?

「可能性としてはあるかもしれないし、ないかもしれない。例えば、『ティム・バートンのコープスブライド』や、ウェス・アンダーソンの『ファンタスティックMr.Fox』を手掛けたイギリスのマキノン&ソーンダース。そこは今、世界一の人形を作っていると言っても過言ではないと思います。見た目が精巧であるのはもちろんのこと、耳にねじを入れて表情を作るような仕組みを作ったり、いろんな新しいことを考えています。そんな会社をはじめとして、残るところは残ると思うんです。手で作る造形物が好きな監督もいるし、アートとしての流れでも残るはず。ただ、映像という面で合理主義という部分を追求していくと、造形物はリファレンスとして扱われることが多くなるかもしれませんが......。こればっかりは作品によるのでわかりません。ただ個人的には、例えばフィギュアスケートの緊張感ある演技をCGで表現したらしらけてしまうように、造形物でも製作における緊張感を保つ努力は、CG時代においても必要ではないかと思います」
 

百武さんの原点、『CASSHERN』の思い出。

 これまで数十本もの映画に携わってきた百武さん。特に思い出深い作品は、大好きな映画の仕事にシフトするきっかけとなった『CASSHERN』だそうです。

「20代の初めの頃は、わりとかっちり作るのが好きだったんです。でも20代後半の頃、マリリン・マンソンなんかが出てきて、日本のプロモーションビデオ界にも"今までの映像のイメージを壊す文化"が広がり始め、僕もその流れに共感していました。そんな状況の中で挑んだのが『CASSHERN』。まさに今まで自分がやってきたことを活かせる新しい作品だ!と意気込んでいましたね。そのなかで、壊す文化には勢いが大切だと思っていたし、同じモノは2回作らないよ!みたいな気持ちが、当時、映画製作に無知だった僕にはありました。
でも、映画では3〜4ヶ月という撮影期間の中で、同じモノを作らなきゃいけないのは当たり前のこと。当時はすごく苦労しました。ただ、デザインと特殊メイク、スーツ造形と現場でのスーツ汚し、すべてをチーム百武で担当させてもらえたのはラッキーでした。かなりのハードワークでしたが、デザインから造形までをひとつの造形会社がすべて担当するということを、初めてできた作品でもあるので、とても思い出深いです」

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アトリエに所狭しと並ぶ造形物。ヨダレが出そうです。


百武さんは思う。この造形がすごい!

 これは見ておくべき!な造形や特殊メイクはありますか?

「スティーブン・ワン(『プレデター』『グレムリン2』)と、クリス・ウェイラス(『グレムリン』『ザ・フライ』)、そして佐々木明さん(『ウルトラマン』)でも一番すごいなと思うのは、『エイリアン』ですね!」

 その理由は?

「モンスターの造形って、人がやっているので仕方ないのですが、どうしても"人間"の要素が入ってきてしまうことが多いと思うんです。でも、美学を持って作られたモンスターは完全に人間とは違っていて、ちゃんとそこで息をして生息している、ひとつの生物になるんです。先ほど挙げたキャラクターたちは、そういう説得力が備わっている。永遠に人の心に残るキャラクターになると思いますよ」


特殊メイクや特殊造形の仕事に就くには、どうしたらいいですか?

 では最後に、これから特殊メイク、特殊造形の仕事に就きたい若者たちに、アドバイスをお願いします!

「例えば大学を卒業していても、専門学校に行くのがいいかも知れないですね。日本には3校ぐらいの専門学校があります。行かなくてもできるとは思いますが、行けばそこでライバルと出会い、仕事と直結するような作品を作ることもできると思います」

 特殊メイク、特殊造形をやっていくうえで、欠かせないスキルは何でしょうか?

「リアリズムと、美意識」

......百武さん、ありがとうございました!

(取材・文/根本美保子)

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百武朋(ひゃくたけ・とも)

1972年、岩手県生まれ。特殊メイク、特殊造形、キャラクターデザイナー。日活映画芸術学院で映画美術を学び、卒業後、代々木アニメーション学院で特殊メイクを学ぶ。1995年に独立、フリーランスとして仕事をした後、2004年に(株)百武スタジオを設立。主な参加作品に、紀里谷和明監督『CASSHERN』(キャラクターデザイン・特殊メイク・特殊造形)、三池崇史監督『妖怪大戦争』(キャラクターデザイン・特殊メイク・特殊造形)、塩田明彦監督『どろろ』(キャラクターデザイン・特殊メイク・特殊造形)、堤幸彦監督『20世紀少年』(ともだちマスク制作)、武内英樹監督『テロマエ・ロマエ1、2』(特殊メイク)、清水崇監督『魔女の宅急便』(ジジ、カバ制作)など。また、これから公開の映画では、中田秀夫監督『MONSTERZ(モンスターズ)』、中島哲也監督『渇き。』、樋口真嗣監督『進撃の巨人』、山崎貴監督『寄生獣』などにも参加!

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