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プロレス×映画

WWEの脚本の迷走とハッタリ営業が脳裏をよぎる世紀の珍作『バトルフィールド・アース』

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 世の中には珍作が溢れていますが、中でも第21回ラジー賞(2001年)で主要部門を制し、ラジー賞創設25周年最低ドラマ賞(2005年)、ついでに2000年代最低作品賞(2010年)にまで輝いた噂の超珍作『バトルフィールド・アース』(2000年)は、珍作界のスーパースターです。

 一時期セレブ御用達といわれたカルト宗教「サイエントロジー」の教祖様が中二病丸出しの教義を基にして書いた三文SF小説を映画化した本作。熱心な信者であるジョン・トラボルタ先生が異星人幹部役として出演してます。

 サイクロ星人が地球を金鉱地として支配して1000年。僻地任務にうんざりする司令隊長タール(トラボルタ)は、新たな金脈を発見すると「本部が勘付く前に、人間達に採掘させて金塊丸儲けや!」と画策。人間たちの中にいたイキの良い青年ジョニーに目をつけ、採掘リーダーとして特別教育を施します。
 だが、原始人レベルのおつむだったはずのジョニーは、タールが想定した以上の知識を身につけ、地球奪還のため、仲間と共に一斉蜂起に出ようとしていた、というお話です。

 教団の資金で強引に大作に仕上げた感がある雑な作風の上、世界観・設定は『猿の惑星』もどき。文化衰退から1000年も経ってるのに当時のフライトシミュレーターや兵器が新品同様と、ツッコミ所は数知れず。

 美術面でもサイクロ星人は母星と管轄地区以外では超ロングな鼻毛風呼吸チューブを着けなくてはならず(人間は逆にサイクロ星人エリアで必要に)、ただでも頭部がデカイ特殊メイクなので滑稽さが倍増。

 さらに製作側とトラボルタ先生がやりたい放題にした脚本(※)は、スジ的に主人公であるジョニーよりも主演のトラボルタ先生を目立たせるための筋書きになっていますが、結果的にトラボルタ先生が「お人好しのマヌケ野郎」になっているという本末転倒振り。

 ちなみにWWEも、脚本家よりマクマホン会長や現場プロデューサーの声が強い世界。番組放送当日に脚本書き直しは日常茶飯事で、結果的にニーズを読み違えた迷走劇となった場合、再変更を余儀なくされることもあるようです。

 また、本作は「ベストセラーSF小説を映画化!」というウリ文句だったそうですが、要はサイエントロジー信者が買い支えての部数といわれています。
 プロレス界における、売り込みたい選手が実際は人気者じゃないけど、番組上では「大注目スター」扱いになっているハッタリ営業にも似ていますね。

 しかし、所詮はハッタリ。本作のハッタリもまるで世間に通じず、歴史的珍作として輝くことに。といってもアサイラム謹製の珍作よりマシな気がしないでもないんですけども!

(文/シングウヤスアキ)

※脚本家としてクレジットに残っている人物が公開10年後に観客への謝罪文を公開したことでも知られますが、製作(教団?)側とトラボルタ先生の変更要求に耐えかねて降板したため、リライトされた脚本にはまったく関与してないそうな。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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